第12回国際水銀会議(12th International Conference on Mercury as a Global Pollutant)が2015年6月14日から6日間、大韓民国(韓国)済州島の済州国際会議センターで開催されました。今回の会議は韓国でのMERS(中東呼吸器症候群)の流行により、一部研究者や水俣病語り部の参加キャンセルがあって順調な開催が危ぶまれましたが、60か国から800名を超える参加者があり、影響は最小限で留められるという事務局の評価でした。毎回行ってきた国水研のブースでの毛髪中水銀濃度測定は感染予防のため中止しましたが、国水研の研究や国際貢献のアピールは例年通りに実施されました。 初日にはオープニングに先立ち、会議主催のワークショップにて教育コースが開催されました。国水研からは午前中に坂本がヒトの水銀曝露バイオマーカーについて、午後には松山環境化学研究室長が水俣湾の水銀評価とヘドロ処理についての講義を行いました。また、オープニングセレモニー直前に熊本県による水俣病語り部の映像とメッセージによるワークショップが実施されました。 2日目の15日午前中には、国水研が担当する「メチル水銀曝露によるリスクがある集団と健康影響」というタイトルでスペシャルセッションが行われ、ローリー・チャン博士と坂本の司会進行で、アメリカ2名、ブラジル、スロベニア、カナダ、日本2名、計7名の研究者が、各々15分の持ち時間で研究発表を行いました。78名の聴衆が集まり、立ち見客が出る盛況ぶりで活発な質疑応答が行われ、スペシャルセッションの内容評価に関しては、86%が満足であるという回答が得られました。本スペシャルセッションは2013年10月に熊本市で開催された水銀による地球規模での環境汚染防止を目指す「水銀に関する水俣条約」が国連環境計画UNEP主導により採択され、水銀のバイオモニタリングへの注目が高まっている現状にある中で非常にタイムリーなセッションであったと考えられます。午後のUNEPによる水銀に関する水俣条約の実施への科学的貢献に関する講演では、水俣病語り部の「二度と水銀によって我々のような被害者を出さないで欲しい」というメッセージが冒頭に流されました。 第12回の国際水銀会議において特記すべきは、赤木洋勝先生(元国際・総合研究部長)が世界で3番目、アジアで初のライフタイム功労賞を受賞したことです。6月17日にこの授賞式で受賞記念講演が実施され、受賞に向けての業績取りまとめや授賞式で放映された先生の活動写真や祝辞メッセージ作成に携わった国水研研究者たちにとっても喜ばしい受賞でした。 次回の第13回国際水銀会議は、2017年7月にアメリカ・プロビデンスにて開催予定です。
※国際水銀会議とは |
会場(EICC) | スペシャルセッション | ブース展示 |