メチル水銀曝露による健康障害に関する国際的レビューに関する研究

村田勝敬(秋田大学大学院医学系研究科環境保健学教授)
吉田 稔(八戸大学人間健康学部教授)
坂本峰至(国立水俣病総合研究センター疫学部長)
苅田香苗(杏林大学医学部衛生学公衆衛生学准教授)
岩田豊人(秋田大学医学部社会環境医学環境保健学助教)
柳沼 梢(東北大学大学院医学系研究科環境保健医学)
岩井美幸(東北大学大学院医学系研究科環境保健医学)
龍田 希(東北大学大学院医学系研究科発達環境医学助手)
仲井邦彦(東北大学大学院医学系研究科発達環境医学教授)

研究要旨

水俣病が発生してから50年以上が経過し、日本でのメチル水銀汚染はもはやないものの、自然界から水銀は発生しており、小児における低濃度水銀曝露 の健康影響に関する問題は必ずしも全て解決している訳でない。また、ブラジル、東南アジア、アフリカなどの発展途上国における、特に金採掘による水銀汚染 は世界的な問題になっている。このような観点から、低濃度曝露を含むメチル水銀由来の健康障害に関する文献レビューを行った。

今年度のレビューにより、以下のことが示された。①メチル水銀および水銀を扱ったPubMed掲載論文の中で、2008年以降ヒト研究の報告数が減 少傾向にある。②海外の出生コホート研究を概観すると、メチル水銀の神経発達影響の他に、同時に曝露された低濃度鉛やn-3長鎖不飽和脂肪酸も小児神経発 達に影響することが示され、低濃度曝露評価の際にメチル水銀単独の測定ではリスク評価が難しいことが示唆された。③魚摂取頻度調査(FFQ)からメチル水 銀の曝露を評価する際、推定メチル水銀摂取量は生体試料中のメチル水銀曝露量を30%程度しか説明できず、むしろ過大評価してしまう可能性がある。④メチ ル水銀毒性をセレン化合物が修飾することが古くより言われてきたが、冠動脈疾患への発症にセレンの修飾作用は観察されないように思われた。⑤近年の国際市 場における金価格の高騰が発展途上国の小規模鉱山の採掘活動の活発化や採掘地区の拡大を招いている。金回収には依然として水銀アマルガム法が主に用いられ ており、大量の水銀が使用される。これにより、森林破壊とともに、作業従事者に慢性水銀中毒症状が散見されるようになっている。

キーワード: メチル水銀、低濃度曝露、小児発達影響、セレン、冠動脈疾患、発展途上国

Ⅰ.研究目的

日本はメチル水銀汚染による広汎な健康被害を水俣病として経験し、これまでに様々な情報を発信してきた。しかし、近年発展途上国における金採掘に伴 うメチル水銀汚染が問題となっている。このような状況を鑑み、本稿では、胎児期および成人期の低濃度メチル水銀曝露や途上国での水銀汚染の実態などを文献 的に概観し、日本での健康被害との比較や、日本が行うべき情報の発信、国際協力のあり方について検討することを目的としている。また、わが国ではメチル水 銀による健康被害を熟知する専門家の数が年々減少している。したがって、若い研究者にメチル水銀の問題を再認識してもらい、同時に学会やインターネットサ イトに発表・掲載することにより、この種の研究の重要性を広く理解してもらうために情報発信する。

本年度は、①メチル水銀の疫学研究のここ10年間の推移を示すとともに、②2011年に発表された海外の疫学研究論文の概要、③メチル水銀とセレン の相互作用に関する論文の概要、④発展途上国での水銀汚染の実態やメチル水銀(および水銀)曝露による健康影響の実態を文献レビューし、その影響や地域の 特徴、並びに研究動向を探った。

Ⅱ.研究方法

文献データベースMedline (PubMed) を用いて、2011年末までに報告された①メチル水銀に関連する論文数の推移、②世界における疫学研究の概要、③途上国での水銀汚染の実態など、メチル水銀曝露に関連する健康影響に関する文献レビューを行った。

(倫理面への配慮)
本研究は、公開された文献調査であるので、倫理的配慮は必要としない。

Ⅲ.研究結果

1)メチル水銀(および水銀)のヒト研究の推移

メチル水銀(methylmercury)がキーワードとなっている総論文数を2001年から2011年までをPubMedを用いて検索すると、124編~298編(全言語)であり、このうちヒトを対象とした論文数は1年当たり55編から109編であった(表1)。 2001~2004年までヒトを対象とした研究が4割以上を維持していたが、2005年以降PubMedでの登録雑誌数の増加とともに幾分低率になり、特 に2008年以降メチル水銀関連論文に占めるヒト研究は総数および率ともに減少の一途を辿っている。同様に、水銀(mercury)をキーワードとする論 文も、2005年以降ヒトを対象とした論文数の割合が減少傾向にある。2011年はメチル水銀および水銀の全論文数に占めるヒト研究は最低水準になった。

1998~2000年にメチル水銀を巡るフェロー諸島出生コホート研究とセイシェル小児発達研究の一大論争があり1-6)、それに伴いメチル水銀のヒト(特に小児)健康影響に関する論文が発表され始めた。また、機を同じくして2002年のNew England Journal of Medicine誌でのメチル水銀の冠動脈疾患リスクに関連する論争があり7-9)、メチル水銀の問題が世間を騒がせた時期と呼応する。一方、2008年にセイシェル小児発達栄養研究の成果が発表され10, 11)、フェロー諸島とセイシェルのメチル水銀論争が終焉を迎えるにつれメチル水銀に関する関心が薄れてきたかに思える12)。これは疫学研究で検証できる仮説が少なくなり、メチル水銀・水銀の細胞・遺伝子毒性機序などの解明に研究者の関心が移行していることを示唆するのかもしれない。実際、メチル水銀および水銀に関する論文の総数は2009年以後増加する傾向にある。

表1 「メチル水銀」関連のPubMed上の論文数の推移
西暦年
2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011
“methylmercury”の入った論文数 145 124 143 159 201 227 298 294 249 267 276
ヒトを対象とした論文数 59 55 60 74 67 75 106 109 82 75 52
割合(%) 40.7 44.4 42.0 46.5 33.3 33.0 35.6 37.1 32.9 28.0 18.8
“mercury”の入った論文数 834 931 897 980 1227 1320 1414 1479 1403 1464 1497
ヒトを対象とした論文数 351 366 361 374 398 440 453 493 422 349 251
割合(%) 42.1 39.3 40.2 38.2 32.4 33.3 32.0 33.3 30.1 23.8 16.8

2)メチル水銀のヒト影響に関するコホート研究の動向

メチル水銀の小児発達影響に関する先行研究はフェロー諸島とセイシェルで行われ、その後の両研究における異なる結論を巡る論争の歴史、さらに最終的 な低濃度メチル水銀曝露による影響の解釈について前年度の報告書に記した。この結末後はメチル水銀の小児神経発達に関する論文発表は極めて低調であり、メ チル水銀が小児神経発達に負の影響を及ぼすことに異を唱える論文は殆どない。このような中、フェロー諸島およびセイシェルからの研究が2011年にも発信 された13, 14)。但し、メチル水銀の主作用を研究したものではなく、魚摂取に伴う長鎖不飽和脂肪酸や鉛の影響である。今後、 低濃度曝露の胎児期影響に関する研究を行う場合には、メチル水銀のみならず、ポリ塩化ビフェニール(PCB)や鉛、セレンや不飽和脂肪酸を同時に測定して おかねば科学論文としての妥当性が確保できていない論文とみなされる可能性が大いにある。

■ フェロー諸島出生コホート研究からの発信

Grandjeanらの研究グループは小児神経発達に及ぼすメチル水銀およびPCB曝露の影響についてこれまで報告しているが、2011年になって臍帯血中で測定された鉛濃度について検討した13)。 1986~1987年にフェロー諸島で集められた母子コホート1,022組のうち、神経発達検査の行われた7歳児896名と14歳児808名で臍帯血鉛と 認知機能の関係を重回帰分析で解析した。臍帯血中鉛濃度は集団平均1.6 μg/dl、最大値11 μg/dlとかなり低い値であったが、低濃度メチル水銀曝露を受けた子供において鉛の認知機能への悪影響を観察した。特に、認知機能の短期記憶 (digit span)は臍帯血鉛濃度が高くなるにつれて低下することが7歳児および14歳児で認められた。鉛とメチル水銀の相互作用を解析すると、これらの混合曝露 には相加作用や相乗作用があるように思えず、各々が独立して神経系に影響を及ぼすと考えられた。本論文で強調されたことは、集団としての臍帯血鉛濃度(中 央値)が1.6 μg/dlと極めて低いにも拘わらず、知能・認知機能に対して鉛の有害影響があることであり、小児神経発達影響を研究する場合には、低濃度であってもメチ ル水銀だけでなく鉛の影響も軽視すべきでない。

■ セイシェル小児発達栄養研究からの発信

セイシェルのMahe島に住む母子300組が小児発達栄養研究(Seychelles Child Development and Nutrition Study)として2001年から始まっている。既にRochester大学グループはこの結果を報告しており10, 11)、 30ヶ月児の小児発達は、出産時母体血のn-3長鎖不飽和脂肪酸を統計的に調整すると、メチル水銀と有意な負の関連を示し、結果としてn-3長鎖不飽和脂 肪酸は9ヶ月児の時のみ小児発達と有意な正の関係を持った。このように、メチル水銀とn-3長鎖不飽和脂肪酸の小児発達影響は加齢により変わりうると考え られる。そこで今回、追跡している対象児が9ヶ月と30ヶ月になったときに実施したBayley Scales of Infant Development のPsychomotor Developmental Index(BSID-II PDI)を用いて評価した14)。 n-3長鎖不飽和脂肪酸はPDI指標に対し有益な影響を示したのに対し、出産時母親毛髪メチル水銀濃度はPDI指標に悪影響を及ぼす結果であった。すなわ ち、この影響は9ヶ月から30ヶ月の間に有意に変化することはなかった。著者らは、胎児期のメチル水銀曝露を研究するとき、母体影響をきちんと調整するこ とを強調した。

■ 有名誌に掲載された一般集団を惑わす研究

毒性研究を解釈するにあたり,過去に示された臨界濃度域を含まない集団を用いてリスク評価 (特に,量-反応評価) した研究には注意が必要である。この種の論文はデータ信頼性の指標として大きな標本数を強調する。例えば,魚摂取に由来する水銀曝露が冠動脈疾患や心筋梗 塞発作の発症に影響を及ぼす証拠はないと結論したMozaffarianらが解析に用いた米合衆国男性は51,529名,女性121,700名(実際の nested case-control studyでは3,427名)であるが,最も高い5分位集団の毛髪換算水銀の中央値は2.70 μg/gであった15)。National Academy of Scienceはメチル水銀の臨界濃度を毛髪水銀で12 μg/gとしている16)。また,血中鉛濃度3.63~9.99 μg/dl群は1.94 μg/dl未満群に比べて心血管系死亡リスクが1.55倍 (95%信頼区間 1.08~2.24) であると報告したMenkeらの対象者数は13,946名であった17, 18)。 これら論文の統計解析に問題があるとは思わないが,著名雑誌であるNew England Journal of Medicine (NEJM) に掲載された有料でないAbstractの結論を読んだ一般人がメチル水銀を多く含む魚を多食するようになるかもしれない。すなわち,毒性物質の量-反応 評価は過去に提示された臨界濃度を含む曝露データの中で検討されるべきであり,そうでないリスク評価は一般人に「百害あって一利なし」となる恐れもある <なお、この論文は現在無料で見られるようになっている>。

3)魚摂取頻度調査(FFQ)と生体試料メチル水銀濃度の関係

魚摂取はヒトの健康にとって非常に有益であると考えられている。これは魚介類がn-3長鎖不飽和脂肪酸を、またビタミンやミネラルを含むからであ る。一方で、魚介類はヒトの健康を害するメチル水銀やPCBなども含む。そのような中、魚摂取頻度調査(FFQ)がメチル水銀の曝露指標として使用されて いる論文に遭遇ことが時折ある。このような魚摂取頻度調査で推定されるメチル水銀(あるいは総水銀)曝露量が、実際の生体試料で測定されるメチル水銀濃度 をどのくらい反映するのか疑わしい。そこで今回は、魚摂取頻度調査と生体試料の両者が測定され、両者の関係を評価している論文を集めて検討した。該当する 論文は幾つかあったが、推定魚摂取量と生体試料中濃度との相関係数が算出されていないものは除いた19-21)

■ 秋田・鳥取の7歳児を持つ母親の魚介類摂取と水銀濃度の研究

Iwasakiら22)は、Dateら23)が作成した食事摂取頻度調査票に魚をさらに加え、わが国 で食される25種類の魚介類を用いて秋田県内の7歳児を持つ母親154名(25~48歳)で検討した。その食事摂取頻度調査票から推定される日々の水銀摂 取量は幾何平均15.3 μg(範囲2.65~48.4 μg)であり、同時に測定された毛髪水銀濃度は1.73 μg/g(範囲0.49~5.82 μg)であった。両者のSpearman順位相関係数はrs=0.335 (p<0.001) と算出された。米国環境保護庁 (US EPA, 1997) は1日当たりのメチル水銀摂取上限値を0.1 μg/kg体重/dayと定めており、これに照らすと91.6%の女性が過剰摂取していたことになる。次に、Dakeishiらはこの調査にさらに鳥取お よび秋田の7歳児をもつ母親を加え、計327名 (24~49歳) で解析した24)。1日当たりの推定水銀摂取量は0.77~144.9 μg (中央値15.0 μg)、毛髪水銀濃度は0.11~6.86 μg (中央値1.63 μg) であり、これらの相関係数はrs=0.245 であった。但し、筆者らは、パーマをかけている女性とそうでない女性の間で推定水銀摂取量は有意な差を認めないにもかかわらず、毛髪水銀濃度はパーマをか けると30%低下すると報告した。すなわち、パーマの有無は毛髪水銀濃度と水銀摂取量の線形関係を大いに攪乱するので、毛髪を生体試料として用いる場合の 曝露評価においては注意を要する。

■ 女子短大生の魚介類摂取と毛髪、爪、尿中水銀濃度の関係

食事由来のメチル水銀と毛髪、爪、尿の生体試料の関係をOhnoらは短大食物関連学科学生59名(19~20歳)で検討した25)。 魚摂取頻度調査票から推定された水銀摂取量の平均値は9.15 μg/day(5および95パーセンタイル値、0.67~25.5 μg/day)、体重当たりで0.175 μg/kg/day(0.011~0.431 μg/day)であった。同様に、毛髪水銀濃度、爪水銀濃度、尿中水銀濃度は集団平均で1.51(0.49~3.60 μg)、0.59(0.22~1.08 μg)、0.86(0.28~2.06 μg)であり、これらの推定水銀摂取量との相関係数は各々r=0.551、r=0.537、r=0.604であった (p<0.001)。性・年齢が均一な集団においては生体試料中の水銀濃度を推定水銀摂取量で30%程度説明でき、しかも異なる生体試料(毛髪、 爪、尿)であっても似通った結果であることが示された。注目すべきは、毛髪水銀の大半はメチル水銀であり、一方尿中水銀の大半は無機水銀であるにも拘わら ず、両者の相関はr=0.790とかなり強い。低濃度メチル水銀/水銀曝露下での結果と考えられる。

■ 妊娠後期女性とその臍帯血の研究

ポーランドで胎児性メチル水銀曝露の小児神経影響を検討する目的で妊娠女性が募集され、単胎出産時に臍帯血が採取された26)。 参加した女性374名(18~35歳)は全て非喫煙者で、糖尿病や高血圧などの臨床疾患はなかった。臍帯血水銀濃度が0.90 μg/L以上の子供は177名、0.90 μg/L以下は197名であったが、集団のレンジあるいは平均値の記載はなかった。妊娠後期(2/3)の自記式週間魚摂取量と臍帯血水銀濃度との相関係数 はrs=0.22 (p<0.0001) であったが、詳細な調査方法の記載は一切なく、かつ魚摂取量からメチル水銀摂取量の推定も行われていない。

■ 米国健康栄養調査データからの食餌性水銀摂取に関する研究

Mahaffeyらは1999~2000年および1999~2002年の米国健康影響調査(NHANES)データを用いて、妊娠可能年齢女性の食餌 性水銀摂取量と血中メチル水銀濃度を調べた。1999~2000年のデータは1,709名(16~49歳)であり、中央値は血中水銀濃度で0.94 μg/L(95パーセンタイル値7.13 μg/L)、血中メチル水銀濃度で0.60 μg/L(95パーセンタイル値6.73 μg)を示した27)。 摂食魚介類から推定される水銀摂取量は幾何平均1.22 μg/day(95%信頼区間1.15~1.29 μg/day)で、血中水銀および血中メチル水銀と総魚介類由来水銀摂取量との相関(人種・年齢で調整した標準回帰係数)は各々0.452と0.508で あった。1999~2002年のデータは上と同じ年齢の女性3,614名であった28)。魚介類からの食餌性メチル水銀量と魚介類 摂取量の相関係数はr=0.68であり、マグロも鮭も摂取量 (g/kg体重/day) が増えると水銀摂取量 (μg/g体重) は増加するが、マグロ摂取は鮭摂取量と比べ水銀摂取量の増加度(傾き)が約3倍近く高くなる。これに対し、水銀摂取量 (μg/g体重/day) が増えると、n-3長鎖不飽和脂肪酸(論文では、EPA+DHA)も増加し、特にマグロと比べ鮭の摂取量が多い人ほどn-3長鎖不飽和脂肪酸の増加が著し くなった。すなわち、魚種を考慮することにより、低メチル水銀かつ高n-3長鎖不飽和脂肪酸を摂取できることが示された。なお、30日間の食事を思い出し て推定した水銀摂取量と血中メチル水銀濃度との単相関係数はr=0.41であった。

■ スウェーデン女性の魚摂取に関する研究

スウェーデン女性 (15~45歳) を対象として日々のメチル水銀摂取量とn-3長鎖不飽和脂肪酸摂取量を食事摂取頻度調査によって推定した29)。 これによると、メチル水銀の1日当たり基準摂取量(RfD、0.1 μg/kg体重/day)以下でかつ推奨されるn-3長鎖不飽和脂肪酸量(4 mg/kg体重/day)を摂取している割合は全体の36%であり、いずれも満たさないのが3.7%、RfD以下であるがn-3長鎖不飽和脂肪酸量も十分 でない人の割合が52%であった。これらの対象者のうち130名が毛髪水銀濃度も測定され、その濃度と食事摂取頻度調査から推定される水銀摂取量の相関係 数を計算すると、rs=0.75 (p<0.001) であった。この研究によると、食事摂取頻度調査は総魚摂食量を過大評価する傾向にあると結論している。


以上より、魚介類の食事摂取調査(FFQ)から推定されるメチル水銀摂取量と生体試料中のメチル水銀濃度との相関rは0.245~0.75の範囲に あり、生体指標の水銀量の10%から50%程度(約30%)を魚介類摂取量から説明できると考えられる。また、食べる魚種が豊富な国ほど相関係数が低くな るように思われる。但し、Dakeishiらの報告にあるように、特に女性の場合パーマをかけると毛髪水銀量が30%近く低下することから24)、毛髪水銀濃度を曝露指標として使用する場合には細心の注意が必要となる。

4)水銀とセレンの関係

メチル水銀毒性へのセレン及びセレン化合物による修飾影響に関する研究は1970年代から報告されており、近年においても水銀曝露による各種疾患の発症に共存するセレンが影響を及ぼすか検討を行った報告が散見される。

■ 冠動脈疾患への影響

水銀毒性に対しセレンが防御的に働くという仮説のもとで、水銀曝露と冠動脈疾患に関する2つのnested case-control study(コホート研究後のデータを用いて行った症例対照研究)が2011年に報告されており、いずれも生体指標中の水銀濃度とともにセレン濃度を修飾 因子として分析・検討している。Wennbergらは、北スウェーデン地方のコホートにおいてnested case-control studyを実施し、血液サンプル採取後に心筋梗塞(MI)を発症した431人(81人の循環器疾患による突然死SCDを含む)とマッチングした対照群 499人について血球中のセレンと水銀濃度、および血漿リン脂質中のn-3長鎖不飽和脂肪酸(EPA+DHA)濃度を分析した30)。 発症リスクを各濃度分布の3分位で比較すると、高レベル群と低レベル群のOdds比は水銀で0.65 (95%信頼区間、0.46~0.91)、セレンで0.75 (0.53~1.06)、EPA+DHAでは0.75 (0.54~1.11)であり、また、個人間の水銀濃度との相関係数はEPA+DHAでr=0.34、セレンでr=0.15といずれも統計的に有意であっ た。食事摂取頻度調査票から推定した魚の摂取量と各濃度との間にはいずれも関連はみられず、多変量モデルで交絡因子を調整しても結果は変わらなかった。一 方、SCDのリスクは、血球セレンが高濃度の者で上昇することが示された。スウェーデン人コホートのような血中水銀濃度が比較的低く、血中水銀と EPA+DHAレベルに正相関がみられる集団では、魚肉の不飽和脂肪酸等の栄養素が水銀毒性に対し保護的に働くため、食事からの水銀摂取による心筋梗塞の リスク上昇が認められないのではないかと著者らは考察している。

Mozaffarianらは、米国大規模コホートで収集した対象者の足の爪を保存し、冠動脈疾患や心筋梗塞を発症した3,427人と年齢、性、人種、喫煙習慣をマッチさせた対照群の足爪中水銀とセレン濃度を分析した15)。 多変量解析の結果、高濃度水銀が循環器疾患のリスク増加には関与しておらず、爪中水銀濃度分布を5分位に分割し、最も高い集団を最も低い集団と比較したと ころ、相対リスクは冠動脈疾患で0.85 (95%信頼区間、0.69~1.04)、心筋梗塞発作で0.85 (0.62~1.14)、全循環器疾患で0.85 (0.72~1.01)となった。爪中セレン濃度および食事質問票から推定した魚の摂取量についても同様の解析を行ったが、有意なリスク上昇は見られず、 さらにセレン濃度が低い集団に限定して水銀の影響を検討したが、いずれの循環器疾患も発症との関連性は認められなかった。なお、爪/毛髪濃度比0.37を 用いた毛髪換算水銀濃度の中央値は患者群で0.62 μg/g(最も高い5分位集団の中央値は2.70 μg/g)、対照群で0.68 μg/g であり、このような水銀低曝露集団では、魚摂取由来の水銀が冠動脈疾患や心筋梗塞発作の発症に影響を及ぼす証拠は得られないと結論している。

これより、スェーデン、米国の2つの水銀低曝露コホート集団では、循環器疾患発症に対する交絡因子調整済みリスク比は1以下(95%信頼区間は1を 挟む)となっており、アウトカムを臨床症状とした場合には心血管系へのメチル水銀毒性作用やセレンの修飾作用は顕在化しないことがわかった。

■ 白内障への影響

循環器系以外の疾患では、白内障への水銀曝露影響に関する報告があり、魚由来で摂取したメチル水銀が眼内レンズに蓄積されて白内障発症リスクを高めるのではないかという仮説を検証している31, 32)。 加齢性白内障は、アマゾン川流域のような緯度が高く紫外線曝露量の多い地域では特に発症しやすくなり、これらの地域では外科的治療を行える病院へのアクセ スも悪いため、高齢者の失明原因として問題視されている。Lemireらは、森林伐採により土壌中の無機水銀が川へ流れ込むため、世界でも有数の高濃度水 銀流域となっているアマゾン川支流のTapajos川の魚を食べる40歳以上の住民について調査した31)。流域12地区の211 人を診察したところ、白内障は69人(32.7%)にみられ、対象者の血中水銀と血漿中セレン濃度を分析した結果、血漿中セレン濃度が25パーセンタイル 値より低値(<110 μg/L)であると2.69倍、血中水銀が25パーセンタイル値より高い(竕・25 μg/L)と4.45倍白内障の発症率が高まることが示された(95%信頼区間、セレン1.11~6.56、水銀1.43~13.83)。25パーセンタ イル値よりセレン濃度が低くかつ水銀が高い住民では、至適条件集団とされる高セレンかつ低水銀集団に比べると16.4倍(95%信頼区間、 3.0~87.9)白内障を発生しやすくなることがわかった。白内障発症をエンドポイントした場合、体内に共存するセレンにより水銀毒性が弱められている 可能性が示されたが、抗酸化物質やビタミン類摂取量などその他の交絡要因が考慮されていないため、さらなる調査・研究が必要である。

■ 総説論文からみたセレンの影響

職業上の曝露がない場合、食事からの魚肉摂取がヒトの主な水銀曝露源となるが、魚に含有されるセレンやほかの栄養素が水銀毒性を軽減するかをテーマとした総説が新たに2報出された。Ralstonらの総説では33)、 ヒトの体内にあるセレン含有酵素は10種類以上知られており、その多くが生体内、特に脳・神経組織における酸化障害を防ぎ、セレン豊富な食事が魚由来のメ チル水銀毒性を弱める論拠を提示している。母親がサメやクジラのようなセレンより水銀の含有モル濃度が高い魚肉を多く食べると、生まれた子どもに健康悪影 響が観察され、セレン豊富な魚類を多く食べると逆に子のIQが高くなることが報告されているため、子どもの健康を守る上で摂取する魚の種類も問題となると 論じている。Parkらの総説では34)、適度な量の魚摂取が体内の不飽和脂肪酸やセレンレベルを高めて、循環器疾患のリスクを低 下させることを文献引用して解説している。循環器疾患死亡リスクの増減に関与するセレンと水銀の相互作用については、臨床試験による観察疫学研究で相反す る結果が出されている上、魚の種類によって含有する不飽和脂肪酸、セレン、水銀量が様々であるため、魚摂取の量的なリクス・ベネフィット分析は現段階では 実施できないと述べている。

■ 上記以外のセレンの作用

水銀毒性とセレンに関する最近の報告には、遺伝子解析やin vivoでの実験、分析法を検討したものなどが見られる35-39)。 哺乳動物の高比重リポ蛋白質(HDL)に分布するパラオキソナーゼ(PON1)は、リポ蛋白の酸化防御作用を有する酵素であるが、in vitro実験でメチル水銀により阻害されることが報告されている。これまでPON1に関する疫学調査がなされていなかったため、Ayotteらはカナダ 北部の魚介類多食地域に在住する成人896名について、血漿PON1活性、血中水銀、セレン濃度およびPON1の遺伝子多型(rs705379, rs662, rs854560)を分析した35)。その結果、血中水銀濃度は交絡因子(年齢、HDLコレステロール値、赤血球膜 内n-3系脂肪酸濃度およびPON1遺伝子多型)で調整後、PON1活性値と有意な負の相関を示し、血中セレン濃度は有意な正の相関関係を示した。 PON1遺伝子多型と血中水銀濃度の間に交互作用は認められなかった。魚介類からのメチル水銀の摂取によりPON1活性が抑制される一方、セレンの同時摂 取でその影響が相殺される可能性を著者らは考察している。Engstromらは、メチル水銀毒性への耐性に抗酸化作用を有するグルタチオン関連遺伝子多型 が係わるか調べるため、北スェーデン地域の心筋梗塞発症者458患者とマッチング対照群569人の遺伝子解析を行ったが36)、心 筋梗塞の発症リスクは遺伝子多型によって変わらず、血清不飽和脂肪酸、血球セレン、血球水銀濃度を同時に考慮しても修飾影響はみられなかった。なお、血清 不飽和脂肪酸や血球水銀濃度を3分位に分割して検討した場合、GCLM-588TT型はCC型に比べリスクを下げる傾向が見られたが、TT型キャリアーが 少数であったため統計的有意性はみられなかったと考察している。

Usukiらは、メチル水銀に感受性の高いセルラインを用いて、メチル水銀曝露が抗酸化セレン酵素に及ぼす影響をin vivoで調べた37)。 その結果、メチル水銀による酸化ストレスはセレン欠乏を引き起こし、セレノシステインのUGAコードンのリーコドが障害され、GSHPx1-mRNAを阻 害した。有機セレン化合物での前処理はセレン欠乏や細胞毒性に対し防御的に働き、メチル水銀曝露による酸化反応を効果的に抑えられることを示した。また Carvalhoらは、セレン含有酵素であるチオレドキシン・レダクターゼ(TrxR)が無機および有機水銀により阻害されることに着目し、実験的に塩化 水銀で不活性化したHEK293 セル中のNAPPH‐TrxRが、亜セレン酸の処置により活性が回復されることを明らかにした38)。 TrxRの阻害はGSHなどの抗酸化物質の産生抑制につながるため、水銀毒性の緩和に亜セレン酸が有用といわれるメカニズムの傍証となる。この他、水銀と セレン化合物の迅速な分析法として、Morenoらは新たにICP-MSにHPLCカラムを入れ替え連結させる方法を提案し、30分程度で尿、血清、臍帯 血中の水銀とセレンが同定可能となることを報告した39)


以上のように、メチル水銀とセレンをキーワードに最近の文献を概観すると、これまでの研究を踏襲・進展させ、疫学また実験的観点からも方向性に広がりのある種々の研究が進められているように思われた。

5)発展途上国における水銀の健康問題

発展途上国における小規模金鉱山での金抽出に使用される水銀は、回収されないまま環境中に放出されるため水銀による環境汚染が生じる。また金採掘に 携わる作業者やその周辺住民の水銀による健康影響が社会的な問題となっている。これまで各国の政府や国連工業開発機構(UNIDO)が水銀の危険性を啓発 してきたが、金採掘に伴う作業者への健康影響や環境汚染に関する問題はより深刻になりつつあることが最近の論文により明らかである。加えて、最近の国際市 場の金価格の高騰により小規模金鉱山における金採掘活動の活発化が森林破壊という新たな問題を引き起こしている。ここでは2011年度に発表された論文を もとに最近の小規模金鉱山や水銀鉱山における採掘に伴う水銀による健康および環境影響について紹介する。

■ 小規模金鉱山における水銀による作業者および周辺住民の健康影響

アフリカの多くの国に小規模金鉱山が存在するが、水銀に関わっている作業者や周辺の住民への健康影響や環境汚染に関する報告は限られていた。しかしながら、最近は各国の小規模金鉱山における水銀曝露評価が行われ、水銀汚染の実態が明らかになりつつある。

ガーナ共和国には全国に小規模金鉱山が点在している。Kwaansa-Ansahらはガーナ西部の中心に位置する小規模金鉱山の作業者40名と農業従事者54名を対象に水銀曝露の実態調査を行った40)。 毛髪水銀濃度は、農業従事者では平均2.35±1.58 μg/g (0.63~7.19 μg/g)で、鉱山作業者では2.14±1.53 μg/g (0.57~6.07 μg/g)であり、平均魚介摂取量と毛髪水銀濃度との間に有意な相関は認められていない。鉱山作業者の尿中水銀濃度は平均1.23±0.86 μg/L (0.32~3.62 μg/L)であり、農業従事者の平均0.69±0.39 μg/L (0.075~2.31 μg/L)よりわずかに高い値であった。現時点では、水銀曝露が人々に重大な健康影響を及ぼしている状況でなかった。一方、ジンバブエ共和国のブルキナ・ ファソ地区には多くの小規模金鉱山があり、金の抽出に水銀を使用している。Tomicicらはこの地区の8つ金鉱山従事者93名を対象に健康調査を実施し た41)。尿中水銀濃度は高値であり、作業者の69%がACGIHの生物学許容濃度35 μg/g Crを超えており、しかも16%の作業者が350 μg/g Cr以上(最高値1,707 μg/g Cr)の値を示した。これらの作業者で医学的調査を行うと、水銀曝露に関連した頭痛 (53.3%)、眩暈 (53.8%)、胸痛 (34.1%)、易労感 (33.0%)、振戦 (31.9%) などの自覚症状の有病率が高く、ジンバブエ共和国の作業者は高濃度の水銀蒸気に曝露されていると考えられる。

南アフリカ共和国では北東部に位置するMpumalanga州の金鉱山周辺の住民の水銀曝露の実態調査が行われた。Oosthuizenらは18歳 以上の住民30名を対象に、尿(28名)および血液(20名)の水銀濃度測定に加えて、アンケート調査(飲食物の摂取量、エネルギー使用、神経症状とその 撹乱因子であるアルコール消費量や脳挫傷の既往歴など)を実施した42)。血液中水銀濃度の中央値は 2.35(<0.5~24.0)μg/Lで、3名(15%)が国の指針値10 μg/L以上であった。尿中水銀濃度の中央値は6.2(0.5~63.5)μg/g Crであり、うち14名(50%)の住民が国の指針値35 μg/g Crを超えていた。一部の住民は明らかに周辺の小規模金鉱山活動にともなう環境からの水銀曝露の可能性を示唆する者もいた。

モンゴルでも小規模金鉱山における水銀使用による健康影響が危惧されている。Stecklingらは200人の女性作業者(曝露者157名、非曝露者43名)の血液、尿、毛髪中水銀濃度を測定した43)。 職業的に曝露される作業者64名(高濃度曝露群)の尿中水銀は中央値4.36 μg/L (7.18 μg/g Cr)であり、非曝露者の0.10 μg/Lと比べて有意に高く、しかも生物学的許容値を超える作業者が12名もいた。環境からの水銀曝露を受けている92名(低濃度曝露群)の尿中水銀の中 央値は2.88 μg/L (2.98 μg/g Cr)であり、このうち10名が生物学的許容値を超えていた。小規模金鉱山における水銀の使用は鉱山作業者のみならず地域住民にも水銀被害を及ぼす危険性 があり、特に出産時期の妊婦を水銀曝露から保護する必要性がある。

南米コロンビアの金採掘活動が行われているカウカ川とマグダレナ川周辺の住民1,328人を対象に水銀曝露評価を毛髪中総水銀濃度で行われた 44)。最も高い値は金鉱山に近いLa Raya地区で5.25±0.32 μg/g、Achi地区では2.44±0.22 μg/g、Montecristo地区では2.20±0.20 μg/gであり、鉱山から離れることにより住民の毛髪水銀濃度は低下した。調査対象の0.75%の住民が10 μg/gを超える水銀濃度を示した。また男性が女性より高値を示した。毛髪総水銀濃度は身長や年齢と弱い相関を示したが、魚介類摂取量との有意な相関は認 められなかった。健康調査で水銀曝露による自他覚症状はなかったものの、住民の健康を守るために、水銀を使用しない技術の導入、環境モニタリングや健康教 育が必要であると著者らは記した。

■ 小規模金鉱山および水銀鉱山周辺の環境影響

エクアドルのEl Oro州にある最も古いPortovelo金鉱山周辺の大気中水銀濃度は金採掘を行っているEl Pache地区で最も高い値が検出され、雨季では2,357±1,808 ng/m3で、乾季では3,700±1,225 ng/m3であった。一方、Portovelo市街地でも雨季に215±44 ng/m3、乾季に574±73 ng/m3であり、いずれも米国有害物質疾病登録局(ATSDR)の最小危険レベル(MRL, 200 ng/m3)を超えていた45)。また作業者のアマルガム燃焼前後の呼気中水銀濃度を測定すると、燃焼後2,007~3,389 ng/m3の水銀が検出され、燃焼前の179~1,352 ng/m3に比べて高値を示した。このことからアマルガム燃焼により高濃度の水銀蒸気が大気中に大量飛散しており、金回収方法の早急な改善を含む健康保護と環境保全の必要性を説いている。

金採掘は水銀による環境汚染に加えて、森林破壊という新たな環境問題を生み出す。Schuelerらは1986-2002年までのランドサットに よって撮影された衛星画像を解析し、西ガーナでは金の露天掘りにより森林破壊が58%進み、金採掘地区の農地が45%減少しており、住民の生活基盤が侵食 されていると報告した46)。また、ペルーのMadre de Dios地方でも、採鉱による森林破壊が2003年に発見されて以来、最近の国際市場の金価格の上昇により、2006-2009年に年間1,915 haの割合で森林破壊が進んでいるとSwensonらは報告している47)

水銀鉱山閉山後の廃鉱からの水銀漏出による環境汚染が危惧されている。トルコの南中部アナトリア地区には多数の水銀鉱山が存在し、1976年に閉山 した。Karahalilらは、環境汚染の生物的マーカーとして、水銀鉱山の近くのKursunlu-KonyaのLadikdamuダムに棲息する魚介 類の水銀濃度を測定した48)。魚介類の水銀濃度は0.504±0.475 mg/kgであり、一方非汚染地区の魚介類では0.04±0.054 mg/kgであった。閉山後、長い年月が経ているにも拘わらず環境汚染は継続している。


近年の国際市場における金価格の高騰は発展途上国の小規模金鉱山の採掘活動の活発化や採掘地区の拡大を招いている (図1)。 金回収の方法として依然として水銀アマルガム法が主流であり、水銀が大量に使用される。近年は金鉱山周辺での水銀汚染に加え、森林破壊による生態系の影響 も危惧されている。一方、金回収作業者に慢性水銀中毒症状が散見され、小規模金鉱山従事者の水銀曝露状況は深刻である。

図1 ペルーにおける金価格、水銀輸入量、鉱山地域の変動
図1 ペルーにおける金価格、水銀輸入量、鉱山地域の変動47)

6)水俣病の歴史的評価

水俣病は、化学工場から排出されたメチル水銀を高濃度に蓄積する魚介類の摂食によって起きたメチル水銀中毒であり、環境への配慮を欠いた産業活動がもたらした公害の原点である49-51)。水俣病の歴史を描いた和書は多数あるが、英文で記した書は必ずしも多くない52-60)。これらの文献によると、水俣病が発生していた当時の生体試料中の水銀測定法は十分に確立されていなかった。このため、メチル水銀の量-反応関係を評価する際に、世界の研究者はイラクで発生したメチル水銀中毒禍のデータ61-63) を利用するものの、曝露データを持たない水俣病の研究成果は殆ど引用されなかった。政府は、わが国の公害の原点と言える水俣病とその原因となったメチル水 銀に関する総合的な調査・研究行うことを目的として、国立水俣病研究センターを設置した。その後、同センターは国立水俣病総合研究センターに改組され、国 際的な水銀汚染に関する研究とともに、情報の提供や被害地域の福祉への貢献も視野に入れて活動を行っている。

表2 メチル水銀毒性に関する早期警告と認知58)
事象発生年 出来事 文献(著者、発行年)
1865 職業性の胎児性メチル水銀中毒の最初に報告された記録 Edwards 1865 64)
1887 メチル水銀毒性に関する最初の実験的研究 Hepp 1887 65)
1930 アセトアルデヒド製造作業者における有機水銀中毒の報告 Koelsch 1937 66)
1940-1954 メチル水銀殺菌剤製造工場における労働者の中毒症例 Franke & Lundgren 1956 67);
Hunter & Russell 1954 68)
1952 2幼児のメチル水銀による発達神経毒性に関する最初の報告 Engleson & Herner 1952 69)
1956 水俣における魚介類に関連する原因不明の疾患の発見 水俣病に関する社会科学的研究会 1999 51)
1959 猫におけるメチル水銀毒性に関する研究 Eto et al. 2001 70)
1967 汚泥における水銀のメチル化実験 Jensen & Jernelov 1967 71)
1968 水俣病の原因としてのメチル水銀の公式承認 水俣病に関する社会科学的研究会 1999 51)
1955-1972 メチル水銀処理された小麦種子を調理したことによる中毒禍の発生 Bakir et al. 1973 61);
Borg 1969 72)
1972 発達神経毒性による遷延影響の実験的研究 Spyker et al. 1972 73)
1973 イラクデータからの大人の量-反応関係に関する報告 Bakir et al. 1973 61)
1986 ニュージーランドにおける妊娠女性の魚摂食による子供への影響に関する初の疫学的研究 Kjellstrom et al. 1986 74)
1997 妊娠女性の魚摂食由来のメチル水銀によるフェロー諸島7歳児神経影響に関する前向き研究 Grandjean et al. 1997 1)

水俣病の原因究明に関する史的研究をしている石原は、2002年に「水俣病の原因究明における反省点を今後の教訓とするための一考察」と題する論文 を書いたが、第2弾となる「有機水銀化合物の毒性はいつ頃から明らかになったのか?」を2011年に発表した75, 76)。 この中で過去の論文に基づき、①アセトアルデヒド製造で無機水銀は有機水銀に変化して真の触媒になること、②有機水銀化合物の中毒症例(職業性中毒と経口 摂取による中毒)はHunterらの論文以前にも多数あること、③水俣病原因解明の過程における文献の検索可能性について述べ、もっと早期に水俣病の原因 解明がなされるべきだったと言及した。

水俣病患者に神経障害が見られることは周知の事実であるが、メチル水銀が精神医学的症状を引き起こすか否かについての証拠は、Haradaの胎児性水俣病患者の症例研究を除いて77)、殆どない。3年以上の臨床経験を持ち、特別の訓練を受けた医師36名が1971年8~9月に水俣とその近隣地域住民を対象に行った精神医学的症状の調査結果をYorifujiらが2011年に報告した78)。 曝露指標は居住地とし、1964年の毛髪試料中水銀濃度の中央値が30.0 μg/gであった水俣を高曝露地域とみなし、904名の住民が参加した。毛髪試料の中央値が21.5 μg/gであった御所浦は中等度曝露地域とみなし、参加者数は1,700名であった。有明地域からは913名が参加したが、毛髪試料データはなかったもの の熊本市(中央値2.1 μg/g)と同等レベルと考えられた(低曝露地域)。有明地域での知能障害の有所見率を1とし、性・年齢、職業(漁業専従、パートタイム漁業者、非漁業 者)を調整したOdds比を算出すると、御所浦と水俣地区のOdds比は各々0.6(95%信頼区間0.4~0.9)と5.2(3.7~7.3)であり、 気分行動障害(当時は「性格障害」と呼称)の発症は、同様に、0.6(0.4~1.0)と4.4(2.9~6.7)であった。痴呆については、御所浦地区 のOdds比は0.3(0.2~0.7)、水俣地区は0.5(0.2~1.2)であった。全地域における精神医学的症状の有所見割合のピークは20歳と高 齢者に見られた。これらの所見は、その当時の認定水俣病患者を除いても、変わらなかった。以上を纏めると、胎児性あるいは後天性のメチル水銀曝露は精神医 学的症状と一見関連するように思われるが、中等度曝露地域(御所浦)の有所見率が低濃度曝露地域(有明)よりも低率であり、36名の医師による診断誤差が なかったと仮定するならば、量-反応関係が認められたとは考え難い。

Ⅳ.考察

重化学工業化政策期に排出された水銀,鉛,カドミウム,ヒ素などの重金属の環境汚染により、人類は様々な健康問題に遭遇した。今日,先進諸国ではこ れらの化学物質に対して厳しい規制を行い、また2009年にナイロビで開催された第25回国連環境計画 (UNEP) 管理理事会では水銀によるリスク削減のための法的拘束力のある「水銀条約」制定に向けた議論が交わされ、2013年にその条約の採択・署名を目指してい る。にもかかわらず、水銀は自然界からの地殻ガスや化石燃料の燃焼を通して発生するので、汚染が皆無になるということはない。その結果、先進諸国では魚介 類摂取による低濃度メチル水銀曝露の小児発達影響が危惧されているのである。一方の発展途上国では、小規模金鉱山や水銀鉱山から放出される水銀問題 40-48) の他に、昭和30年代のわが国のように高度経済成長という国家が掲げる政策下で大規模な環境汚染が発生する可能性も否定できない60)。 中国の液晶ディスプレイ製造工場労働者で神経障害が発生したとNHKニュースが2011年2月に報道し、これを聞いて液晶ディスプレイ背面に使用している 水銀蒸気吸入による中毒ではないかと疑ったが、その続報は途絶えている。発展途上の国において胎児性水俣病のような惨禍を避けるために、かかる危険性を早 期に認知するとともに、その予防対策を講じることに注意が向けられるべきである。

出産時に採取した母体血は原則的には母親の曝露指標用であり、出生児の曝露状況を反映するかどうかは別問題である79)。母体血と臍帯血の胎盤経由の各種重金属の移行を調べた研究が最近Sakamotoらによって報告された80)。 九州のある産婦人科医院に通院している出産前1週間の妊婦の血液と臍帯血 (81組) が収集され、赤血球中の水銀、鉛、カドミウム、ヒ素、セレン濃度が測定された。それらの母子間の値はいずれも正の相関が見られ、母体赤血球濃度が高いほど 臍帯血赤血球濃度も高くなることが示された。また、いずれの重金属も母子間で有意な濃度差が認められ、水銀とセレンは臍帯血赤血球濃度の方が母体血赤血球 濃度より高かった。このため、臍帯と母体の赤血球濃度比は水銀とセレンで1より大きくなり、これら2金属の胎児への胎盤移行度は高いと推定された。メチル 水銀は必須アミノ酸と結合した形で胎児に選択的に移行するものの 81, 82)、母親から児へのメチル水銀の移行度は母子ペアで大きく異なっていた83)。セレンはSakamotoらの報告80) と同様の結果もあるが84)、逆に臍帯血セレンが母体血セレンよりも低いとする結果85, 86) もあり、人種や食習慣の相違によって異なるかもしれない。一方、カドミウムの胎盤経由の移行はこれら金属の中で最も低く、同様の報告は多数ある85, 87-92)。胎盤でのカドミウム蓄積量が母体血や臍帯血よりも高いことはよく知られており87, 91, 93)、これは胎盤で発現するメタロチオネインがカドミウムを捕捉することによる94-96)。 以上より、臍帯血の代りに母体血を採取し、その濃度を胎児期の曝露指標として使用することの可否は検討する有害化学物質と影響指標によって異なるようであ る。すなわち、胎盤血流に起因すると考えられる影響指標 (出生体重など) に対しては母体血の曝露指標が有用であるが97)、発達段階にある神経系などの影響指標に対しては臍帯由来の曝露指標の方が推奨されよう83)。実際、小児の心臓性自律神経機能に及ぼすメチル水銀影響は 臍帯血水銀濃度や臍帯組織メチル水銀濃度で有意な関連を示したが、母親毛髪水銀濃度では有意とならなかった98, 99)

今後のメチル水銀の疫学研究として、耐容週間摂取量 (TWI) を算出する際のone compartment pharmacokinetic modelに使われる生物学的半減期や毛髪/血液濃度比などの仮説を再検討することが挙げられるかもしれない。メチル水銀の生物学的半減期は、これまで2 つの論文で算出された52±4 (標準誤差) 日 100) と50±1日 101) の値から50日とされ、上のモデルの排出定数として0.014 (= ln2 / 50) が使われている。実際には、イラクで高濃度メチル水銀曝露を受けた患者で算出した生物学的半減期72日や102)、魚摂取を介して高濃度メチル水銀に曝露したボランティアから算出された半減期80日も存在する103)。また、メチル水銀の毛髪/血液濃度比は,過去に報告された値は140~370であり、250が一般に用いられている。しかしながら、フェロー諸島出生コホートの7歳および14歳児における濃度比は中央値で370と264であった104)。さらに、スウェーデン成人の中央値は373 105)、日本人妊婦の平均値は約350であった106)。 このように、最近報告された毛髪/血液濃度比は過去に算出された値と大きく乖離している可能性があるが、メチル水銀の暫定的耐容週間摂取量やTWI算出に 際して保守的な値が使われている。したがって、どの値が薬物動態学的に最適であるのか吟味する研究は将来のリスク管理に不可欠であろう。

Ⅴ.結論

今年度の文献レビューにより、以下のことが示された。①メチル水銀および水銀を扱ったPubMed掲載論文の中で、2008年以降ヒト研究の報告数 が減少傾向にある。②海外の出生コホート研究を概観すると、メチル水銀の神経発達影響の他に、同時に曝露される低濃度鉛やn-3長鎖不飽和脂肪酸も影響す ることが示されており、低濃度曝露評価の際にはメチル水銀単独の測定ではリスク評価が難しいことが示唆されている。③魚摂取頻度調査(FFQ)からメチル 水銀の曝露を評価する際には、推定メチル水銀摂取量は生体試料中のメチル水銀曝露量を30%程度しか説明できず、むしろ過大評価してしまう可能性がある。 ④メチル水銀毒性をセレン化合物が修飾することが古くより言われてきたが、冠動脈疾患への発症にセレンの修飾作用は観察されないように思われた。⑤近年の 国際市場における金価格の上昇が発展途上国の小規模鉱山の採掘活動の活発化や採掘地区の拡大を招いている。金回収は依然として水銀アマルガム法が主流であ り、水銀が大量に使用される。これにより、森林破壊とともに、作業従事者に慢性水銀中毒症状が散見されるようになっている。


なお、「若い研究者にメチル水銀の問題を再認識してもらい、同時に学会やインターネットサイトに発表・掲載することにより、この種の研究の重要性を 広く理解してもらうために情報発信する」目的で、日本衛生学雑誌2011年発行の66巻682~695頁に「メチル水銀毒性に関する疫学的研究の動向」と 題する総説を掲載した(引用文献12)。これはPubMedにも“Recent evidence from epidemiological studies on methylmercury toxicity”(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21996768) として掲載され、また日本の研究者は、J-Stageを介して、PDFファイルとしてこの総説を入手できる。

Ⅵ.次年度以降の計画

メチル水銀曝露は低濃度でも小児の神経発達に影響することが多くの論文で示されている。一方で鉛やPCBなどの化学物質も神経毒性があることが知ら れており、これらのメチル水銀との同時曝露による神経発達影響に関する研究が今後なされていくと考えられる。したがって、2012年に発表される論文の中 で、このような内容を含む論文を選択的に収集し、その中でメチル水銀がどのように評価されているのか検討したい。また、メチル水銀のTWIを算出する際の one compartment pharmacokinetic modelに使われる生物学的半減期や毛髪/血液濃度比などの仮説を再検討したい。

引用文献

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A review of health effects of methylmercury exposure in humans

Katsuyuki Murata1, Minoru Yoshida2, Mineshi Sakamoto3, Kanae Karita4, Toyoto Iwata1, Kozue Yaginuma-Sakurai5, Miyuki Iwai-Shimada5, Nozomi Tatsuta5, Kunihiko Nakai5

1 Department of Environmental Health Sciences, Akita University Graduate School of Medicine
2 Hachinohe University Faculty of Human Health
3 Department of Epidemiology, National Institute for Minamata Disease
4 Department of Hygiene and Public Health, Kyorin University School of Medicine
5 Department of Environmental Health Sciences, Tohoku University Graduate School of Medicine

Abstract

More than fifty years have passed since the outbreak of Minamata disease and methylmercury poisoning disasters like the Minamata disease due to industrial effluents or methylmercury-containing fungicide intoxication have scarcely happened in developed countries. Nevertheless, health issues of low-level exposure to methylmercury in humans can exist and environmental and health issues of widespread mercury contamination have occurred in gold and mercury mining areas of developing countries. In this article, we provide an overview of studies addressing these health effects of methylmercury and mercury, by using the PubMed of the US National Library of Medicine.

The following suggestions were obtained concerning low-level methylmercury exposure: (1) In recent years, the proportion of human studies among methylmercury- or mercury-related reports tends to decrease. (2) In reviewing birth cohort studies in the world, low-level exposure to lead and n-3 polyunsaturated fatty acids, as well as methylmercury exposure, seem to affect child development. Therefore, a research model with concomitant exposures is necessary for the risk assessment of methylmercury. (3) Daily mercury intake estimated using a food frequency questionnaire can explain approximately 30% of the exposure level determined from hair/blood samples and seems to overestimate the actual level. (4) Selenium has been suggested to modify the adverse effect of methylmercury since 1970s, but such protective effects of selenium on coronary heart diseases were not observed in recent studies. (5) Recent mining is converting primary forest at a non-linear rate alongside increasing gold prices. As the result, there seem to be both environmental impacts such as deforestation and many small-scale gold miners with signs/symptoms involved in chronic mercury poisoning in developing countries.

Keywords: Methylmercury; Selenium; Child development; Gold and mercury mining