メチル水銀曝露による健康障害に関する国際的レビューに関する研究

研究者 村田勝敬(秋田大学大学院医学系研究科環境保健学教授)

研究要旨

水俣病は発生から50年経過して日本でのメチル水銀汚染はもはやないが、国際的には小児における低濃度水銀曝露の健康影響に関する問題や、中国、ブラジル、東南アジア、アフリカなどの発展途上国における、特に金採掘による水銀汚染が世界的な問題になっている。このような観点から、低濃度曝露を含む国際的なメチル水銀による健康影響に関する文献レビューを行った。

低濃度メチル水銀に関して、以下の4点が示された。(1)臍帯水銀濃度は胎児の水銀曝露量を表すものの妊娠期のどの時期を反映するのか定かでなかったが、臍帯血水銀濃度は妊娠後期のメチル水銀レベルを反映することをSakamotoらが立証した。(2)低濃度メチル水銀が小児神経発達に影響を及ぼすか否かの論争がフェロー諸島出生コホート研究とセイシェル小児発達研究の間で論争が繰り返されたが、今回の文献レビューにより、胎児期のメチル水銀曝露は小児の神経発達に悪影響を及ぼし、一方、多価不飽和脂肪酸は神経発達に有益な影響を及ぼすと推定された。(3)小児期の神経発達に影響する化学物質は多くあり、メチル水銀、ポリ塩素化ビフェニル、多価不飽和脂肪酸、鉛などがこれまでに報告されている。これらは相互に影響を及ぼす可能性があるので、特に低濃度曝露評価の際には、研究デザインの段階で重要な交絡因子として考慮されねばならない。(4)水銀の冠動脈疾患に対するリスクについては未だに確定的でないが、その前段階である自律神経系影響としてメチル水銀は副交感神経機能低下ないし交感神経優位状態を引き起こすことが示唆された。

途上国の水銀汚染に関しては、小規模金鉱山周辺や水銀鉱山周辺の採掘活動に伴う水銀による環境汚染や作業者を含む地域住民の健康被害の実態が明らかになった。アジア地域の水銀汚染や健康被害が深刻な社会問題となっている。アフリカでは手掘金鉱山で働いている女性や子供の水銀による健康影響が危惧された。一方、小規模金鉱山の水銀による環境汚染や健康被害の防止計画がブラジル・アマゾン川Tapajos流域で国連工業開発機構により実施され、大気中水銀の放出削減効果が見られた。にもかかわらず、多くの発展途上国の小規模金鉱山の鉱夫において、水銀による環境汚染や健康被害に対する意識が未だ低い。環境や健康に対しての鉱夫の意識の改善のための教育、水銀によらない金採掘方法の導入、水銀回収蒸留装置による水銀の回収などの問題をどのように克服するかが今後の課題となる。

キーワード: メチル水銀、低濃度曝露、神経発達影響、発展途上国、金採掘

研究協力者

吉田 稔(八戸大学人間健康学部教授)
仲井 邦彦(東北大学大学院医学系研究科環境保健医学准教授)
坂本 峰至(国立水俣病総合研究センター疫学部長)
岩田 豊人(秋田大学大学院医学系研究科環境保健学助教)
島田 美幸(東北大学大学院医学系研究科環境保健医学・日本学術振興会特別研究員DC)
柳沼 梢(東北大学大学院医学系研究科環境保健医学・日本学術振興会特別研究員PD)

Ⅰ.研究目的

日本はメチル水銀汚染による広汎な健康被害を水俣病として経験し、これまでも日本から様々な情報を発信してきた。しかし、近年発展途上国における金採掘に伴うメチル水銀汚染が問題となっている。このため、胎児期の低濃度曝露、成人期の低濃度曝露、途上国での水銀汚染の実態など国際的なメチル水銀曝露による健康被害に関して文献レビューを行い、日本での健康被害との比較や、日本が行うべき情報の発信、国際協力のあり方について検討することを目的とする。また、本邦ではメチル水銀による健康被害を熟知する専門家の数が年々減少している。したがって、若い研究者にメチル水銀の問題を再認識させ、同時にこの種の研究の重要性について、学会等の場において講演・発表することによって広く情報発信する。

本年度は、特に①胎児期のメチル水銀の曝露評価、②低濃度のメチル水銀曝露による健康影響、③途上国での水銀汚染の実態など、国際的なメチル水銀曝露による健康影響に関して文献レビューを行い、それらの内容を吟味した。

Ⅱ.研究方法

国際的な文献データベースMedline (PubMed) を用いて、2009年末までに報告された①胎児期のメチル水銀の曝露評価、②フェロー諸島出生コホート研究とセイシェル小児発達研究の論争の行方、③低濃度メチル水銀曝露による心血管影響、④途上国での水銀汚染の実態など国際的なメチル水銀曝露による健康影響について文献レビューを行った。

なお、本研究は公開された文献調査であるので、倫理的配慮を必要としない。

Ⅲ.研究結果

1)胎児期のメチル水銀の曝露評価

頭髪水銀濃度は、試料採取の容易さゆえに、メチル水銀研究の曝露指標として用いられている1-4)。特に、頭部毛根部から1 cm毎に測定した総水銀濃度は、アフリカ系および白人系頭髪が月当たり1 cm伸びることから、各々の妊娠時期を反映する曝露量として利用できると考えられてきた5)。最近の研究によると、日本人男女20~35歳の頭髪伸長速度は1.3±0.2 (平均±SD) cm/4週間であった6)。また、摂取したメチル水銀が頭髪水銀として現れるまでの時差は約3週間と推定されている。したがって、妊娠時期別の曝露指標として頭髪水銀濃度を使用する場合、当該集団のその伸長速度を事前に把握しておくことが重要となる。

近年、胎児期の曝露評価のための生体試料として臍帯が注目され、出産時の母親頭髪水銀濃度とともに、臍帯水銀濃度がメチル水銀の曝露指標として用いられている3)。すなわち、臍帯血水銀濃度や臍帯組織メチル水銀濃度はより直接的な胎児の曝露量を表すと考えられるからである。臍帯血の赤血球中水銀濃度は、出産時の母親の毛根部1 cmの頭髪水銀濃度と相関が最も高かったことから、妊娠後期のメチル水銀レベルを反映すると推定される7)。また、臍帯血の総水銀濃度は出産時の母体血のそれより1.48 (95%信頼区間、1.29~1.67) 倍高く、しかもその臍帯血/母体血比は個人差が大きい3,8)。以上より、出生時曝露とそれによる小児神経発達影響を検証する研究デザインの場合、臍帯水銀濃度の利用が推奨されよう。また臍帯組織の分析に当たっては、乾燥臍帯の方が湿臍帯よりもメチル水銀測定の精度管理面で優れていると考えられており、日本では“保存臍帯(へその緒)”による後向きコホート研究などの活路が開かれている9)

参考値として、日本人の妊娠可能な年齢層女性の頭髪水銀濃度の平均値は1.4 μg/gと報告されている10)。また、食品摂取頻度調査から推定される水銀摂取量が0.67~25.5 (平均値9.15)μg/日であった女子学生(19~20歳)59名の頭髪水銀濃度は平均1.51 (範囲、0.49~3.60) μg/gであり、尿中水銀濃度は0.86 (0.28~2.06) μg/g Cr(クレアチニン補正値)であった11)。なお、尿中水銀濃度は、頭髪水銀濃度とは逆に、大半が無機水銀である1)

2)メチル水銀の発達神経影響に関する論争の行方

イラクのメチル水銀中毒禍(1971年)では、メチル水銀殺菌剤で処理された種子小麦をパンの原料として使用した農家を中心に多数の犠牲者(入院患者約6,000人、死亡者約500人)を出した。この時イラクに入りヒト健康影響調査を行ったのは米国ニューヨーク州ロチェスター大学の研究グループ(代表、Clarkson博士)であり、メチル水銀による神経障害に関する量−反応関係を世界に向けて発信した12-15) 。このイラクのメチル水銀中毒禍(および水俣病)は、摂取量に照らして、通常の食生活と大きくかけ離れた高濃度曝露下で発生した。しかしながら、世界の研究者の関心事は低濃度メチル水銀曝露による健康影響がどのレベルで起こり始めるかであり、これに応える形で魚多食集団のいるニュージーランド、デンマーク自治領フェロー諸島、セイシェル共和国を舞台に出生コホート研究が実施された。そして、各々の研究成績が出そろった1998年以降より、小児神経発達に低濃度メチル水銀が影響するか否かの論争が後2者の研究グループ間で始まった15,16)

争点が噛み合わない主な理由は両グループで測定した曝露指標と影響指標に共通性が少ないことであった2,17)。曝露指標として使用された生体試料は、セイシェルでは出産後数ヶ月の間に母親から採取した毛根部より9 cmの頭髪であり、フェロー諸島では、出産後の母親毛根部から3 cmないし9 cm長の頭髪の他に、臍帯血であった18)。その後、両研究グループで似通った神経発達検査も幾つか行われたが19,20)、結論は平行線のままであった21,22)。フェロー諸島出生コホートの研究グループは、数理モデルを駆使して、セイシェル小児発達研究における不確実性と過小評価について執拗に論じた 23-27)。これに対し、メチル水銀は小児の神経発達(あるいは血圧)に対し、ある時は正に、ある時は負に影響し、結果に一貫性がないことをロチェスター大学グループは強調し、メチル水銀の影響と称するものは“偶然”以外の何物でもないとの主張を繰り返した28-31)

古くよりクジラ肉を蛋白源としてきたフェロー諸島で出生コホート研究(母子1,022組)が行われ、曝露指標の母親頭髪総水銀濃度は中央値4.5 (0.2~39.1) μg/g、臍帯血水銀濃度は中央値24.2 (0.5~351) μg/Lであった32)。7歳児と14歳児で神経系の検査が行われ、神経心理・行動検査では記憶、注意、言語などの能力が出生時メチル水銀の増加に伴って低下することが示された 15,20)。同様に、聴性脳幹誘発電位潜時の延長や自律神経機能の低下も出生時メチル水銀の増加に伴い現れることを7歳児、14歳児調査で明らかにした33-36)。また、水銀毒性作用に拮抗することが示唆されているセレンであるが、フェロー諸島出生コホートで得られたデータ解析の結果によると37)、セレンのメチル水銀神経毒性に対する保護作用を示す証拠は得られなかった。これ以後のフェロー諸島における研究の関心はメチル水銀以外のPCB、有機フッ素化合物等の曝露・健康影響に移っているようにみえる38)

一人当たりの魚摂食量が世界有数のセイシェル共和国で行われている研究(母子779組)では、母親の頭髪総水銀濃度は平均6.8 (範囲0.5~26.7) μg/gであり、これらの母親から産まれた子どもの発達神経影響は5.5歳と9歳の時に調べられた16,19)。さらに、現在17歳児の結果を投稿中である。セイシェル小児発達研究では、メチル水銀と神経発達影響との関係に一貫性が見られず39-43)、わずかに9歳児の頭髪メチル水銀濃度と注意欠陥多動性障害指標の間に有意な関連が認められるのみであった31)

このような論争に終止符を打ったのはセイシェル小児発達栄養研究44)である。母子ペア229組から成る小児発達栄養研究は魚由来の母体血漿多価不飽和脂肪酸が小児神経発達に有益な影響のあることを立証したが、その有益な影響は母親の出産時頭髪メチル水銀濃度の影響を考慮すると消失した。その上、多価不飽和脂肪酸値で調整すると、頭髪メチル水銀濃度と神経発達の間に有意な負の相関が観察された。この論文が極めて示唆的であるのは、魚の大量摂食によりセイシェルの母親の血漿多価不飽和脂肪酸および頭髪メチル水銀はほぼ並行して高くなり、有意な相関(特に、ドコサヘキサエン酸、ドコサヘキサエン酸+エイコサペンタエン酸、ω-3脂肪酸とメチル水銀との相関係数rは各々+0.32、+0.31、+0.31であり、P<0.001)を示したことである。このセイシェル小児発達影響研究の主任研究者であるDavidson博士も、胎児期メチル水銀曝露と発達指標の関連性を調べる研究において、母親の栄養状態(特に、ω-3脂肪酸など)が交絡因子として働く可能性を示唆している45)

さらなる証拠は、平成13年より始められた東北コホート調査である46)。母子約500組が調査に参加し、出産直後の3 cm長の母親頭髪水銀濃度(中央値1.96、0.29~9.35 μg/g)の他、臍帯血漿ポリ塩素化ビフェニル(PCB)量、妊娠期間中の魚摂取量などが測定され、ブラゼルトン新生児行動評価が生後3日目に行われた。新生児行動評価の中の運動機能はメチル水銀やPCBの増加に伴い低下し、また魚摂取量が増えるとともに良好になるように思えた。これらの曝露指標と交絡因子を説明変数とし、新生児の運動機能を目的変数とする重回帰分析を行うと、メチル水銀は有害影響を、また魚摂取量は有益影響を及ぼすことが示唆されたが、PCBの影響は観察されなかった。この研究では、魚摂取量は多価不飽和脂肪酸量を反映したと考えられる。同様に、フェロー諸島出生コホート研究グループは2002年以降の論文で23)、共分散構造分析(structural equation model analysis)の中に曝露指標として出産時母親頭髪水銀と臍帯血水銀濃度を、また幾つかの交絡因子の中にクジラ摂食回数(や魚類摂食回数)を加えて解析しており23,27)、結果として多価不飽和脂肪酸量を補正したとみなすことができよう。なお、このフェロー諸島の研究では、PCBは神経心理・行動学的検査成績と負の相関があるように思えたが(0.05<P<0.1)、メチル水銀の影響を考慮した重回帰分析を行うと、有意なPCB影響はないと判断された47)。すなわち、PCBの健康影響を検討した報告は幾つか存在するが48)、交絡する化学物質(例えば、メチル水銀濃度)の測定を怠ると異なる結論が導かれ得ることを示唆する。

これから先は推論の域を出ないが、これまでセイシェル小児発達研究で一貫性のない結果が度々見られたのは、メチル水銀の交絡因子となり得る多価不飽和脂肪酸あるいはPCBsの指標を回帰モデルの独立変数に入れないで解析しているため、メチル水銀曝露量を表す褥婦の9 cm頭髪総水銀濃度が、妊娠期間中のメチル水銀曝露濃度とともに、妊娠中の魚摂取量(多価不飽和脂肪酸値)も反映したと考えると話の辻褄が合う(これは、Strainらの頭髪水銀濃度とω-3脂肪酸の有意な正の相関から推測される)。すなわち、セイシェルの母親頭髪メチル水銀濃度は、メチル水銀値とともに魚摂取量や多価不飽和脂肪酸値を反映していたので、多価不飽和脂肪酸を代表する時には小児神経発達指標に良好な影響を及ぼし(=正の関連を示し)、メチル水銀を代表する時には悪影響を及ぼす(=負の関連を示す)と考えることは可能であろう。なお、偶然の一致かもしれないが、Strainらの論文が出た頃にDavidson博士がセイシェル小児発達研究の主任研究者Principal Investigatorとなり、Clarkson博士の共著者名がそれ以後の論文から消えているものもある。

フェロー諸島出生コホート研究では、7歳児の視覚誘発電位潜時と出生時メチル水銀濃度との間に有意な関連が見られなかった15)。この時点で、著者らはn-3脂肪酸がある種の神経毒性に対し保護作用を示すかもしれないとする文献49)を引用し、実際に1994年に出生したコホート2の母子182組を用いてn-3脂肪酸の児体重に及ぼす影響を検討した50)。これによると、月当たりのクジラ脂身摂食回数の増加に伴い臍帯血清中のエイコサペンタエン酸 (EPA) は有意に増加し(P=0.002)、ドコサヘキサエン酸 (DHA) も増加傾向が認められた。出生体重に対し、メチル水銀やPCBの影響は見られなかったが、EPAは有意な関連を示した。一方、ロチェスター大学グループが栄養学的研究のための新たなセイシェルでのコホートを立ち上げたのは2001年になってからである44,51)。ロチェスター大学グループの対応が遅れた理由として、嘗てイラクのメチル水銀中毒禍に関わった際、曝露源がメチル水銀殺菌剤で汚染された小麦であり、結果として多価不飽和脂肪酸の関与を全く疑わなかったこと等が想像される。フェロー諸島 (N=182) の臍帯血清中脂肪酸値とDHA相対濃度は各々632±116 mg/Lと8.95±1.65%(絶対値換算は57 mg/L) であり50)、他方セイシェル共和国 (N=183) の出産時母親血DHA値は160±60 mg/Lであった43)。因みに、Yaginuma-Sakurai らの日本人対象者54名のDHA+EPA値は140 mg/L前後であった6)

3)低濃度メチル水銀曝露による心血管影響

セイシェルおよびフェロー諸島の2つのコホート研究における論争と同様の構図が、低濃度メチル水銀の冠状動脈疾患リスクをめぐって、再来した。その発端は東部フィンランドに住む男性において「魚多食ないし高い頭髪水銀濃度の人は冠状動脈疾患のリスクが高い」という論文52)がCirculation誌に掲載されたことによる。そして、足指の爪水銀濃度を用いた2つの症例対照研究が2002年のNew England Journal of Medicine誌の中で激突した。欧州人を主たる対象とした研究は冠状動脈疾患リスクと総水銀曝露との関連を支持し53)、米国男性医療従事者を対象とした研究ではこの仮説を立証できなかった54)。その後も幾つか追跡研究が発表されたが、冠状動脈疾患の発症リスクを減ずる多価不飽和脂肪酸の効用を強調する多くの論文が学界を席巻し44,52,55-58)、メチル水銀が冠状動脈疾患の発症リスクを本当に高めるか否か、あるいは血清セレンが心血管疾患に対して保護的に働くかどうか59)は未だ霧の中にある。一方で副交感神経機能低下や交感神経優位状態が心筋梗塞や突然死のリスクとなり得るという仮説に対する反証はされていない。

胎児性水俣病患者の副交感神経機能は低下していた60,61)。フェロー諸島出生コホート研究によると、低濃度メチル水銀でも血圧や心臓性自律神経機能に影響した34,35)。同様に、臍帯組織メチル水銀濃度を曝露指標として用いた後向きコホート研究でも、低濃度メチル水銀が7歳児副交感神経の機能低下と関連していた9)。このようなメチル水銀の心血管影響は、胎児期曝露だけでなく、成人曝露でも観察されている62-64)。特に、日本の暫定的耐容週間摂取量(3.4 μg/kg体重/週のメチル水銀量)のマグロを14週間食べ続けた介入群では平均頭髪水銀濃度が2.30 μg/gから8.76 μg/gまで上昇し、しかも日常食群(平均頭髪水銀濃度は2.1 μg/g)と比べて交感神経が優位状態になった6)。もっとも、マグロ摂取を止めて15週後に調べると両群に差は見られなくなった。以上より、高濃度のメチル水銀を含有する魚介類を長期間摂食していると、自律神経機能に影響が現れる可能性が示唆される。

4)途上国での水銀汚染による健康被害

水俣病が発生して以来、水銀による環境汚染に伴う健康被害は世界各国の大きな関心事になった。1979年に始まったブラジル・アマゾン川流域における「ゴールド・ラッシュ」は重大な水銀汚染をもたらしたが、その後の健康調査で鉱夫の血中水銀濃度や尿中水銀濃度が高く、水銀中毒患者もいると推定された65)。世界中に小規模鉱山で手掘り金採掘に直接・間接的に携わっている人が約1億いる。アマゾン川流域は手掘り金採掘の10%が行われており、年間30tの金を生産している。とりわけ、アマゾン川のTapajos流域は世界有数の手掘りによる金採掘地域であり、金抽出に多くの水銀を使用することから水銀による環境汚染が大きな社会問題となった。ブラジルでは、今日でも約4万人の鉱夫が年間8tの金を採掘しており、金の抽出には金属水銀がその約2倍が使用され、その多くが回収されないまま環境中に放出されている66)。環境中の水銀汚染はその地域のみならず河川を汚染する。水中で無機水銀からメチル水銀への有機化が起こり、食物連鎖を通じて魚介類に蓄積される。このメチル水銀による汚染が食糧源を魚介類に依存するアマゾン川流域の住民に対し健康被害をもたらすと懸念されている。金採掘地域の水銀汚染はアマゾン川流域に留まらず、アフリカやアジアの金産出国でも同様な問題を抱えている67,68)。International Labor Officeによると69)、小規模金鉱山で働く鉱夫は1,100~1,300万人であり、うち女性が250万人、子供が25万人で、特に多くの子供は家族の家計を助けるために両親と共に働いている。このため、鉱夫のみならず女性や子供への水銀曝露による健康影響が危惧されている。

近年、中国貴州省の水銀鉱山周辺の水銀汚染や採掘に携わる作業者やその周辺住民の健康影響や中国、タイ、フィルピン、インドネシアでの小規模金鉱山周辺での水銀汚染が問題視されている。本報告書はアジア地域およびその他の地域における小規模金鉱山における採掘に伴う水銀汚染と、それに伴う健康影響について紹介する。

①中国の水銀鉱山地域の汚染

アジアの水銀汚染は主に水銀鉱山、金鉱山そして化学工業に起因している70)。中でも貴州省には地質学的に幾つかの水銀鉱山が点在しており、人為的(産業)活動が環境中への水銀排出をもたらし、深刻な水銀汚染を引き起こした。貴州省には万山、呉川、濫木廠、銅仁、丹寨などの地域に水銀鉱山があり、3千年にも及ぶ長期採掘により、重大な水銀汚染を引き起こしている。特に、万山水銀鉱山では鉱石残渣に4,400 mg/kg以上の水銀が検出され、しかも残渣から溶出した水銀が河川へ流出している71)。また残渣にはメチル水銀が0.17~3.9 μg/kg検出されている。

貴州省の水銀鉱山の大気中水銀濃度は万山水銀鉱山地区で17.8~102 ng/m3、呉川水銀鉱山地区で19.5~2,110 ng/m3そして濫木廠水銀鉱山地区で7.9~468 ng/m3であり、これはヨーロッパや北アメリカの一般大気中水銀濃度の2~4桁高い値である。コケは大気を通じて栄養分を摂取するため大気汚染の生物学的指標なりうる70)。Qiuらは、水銀鉱山地区のコケの水銀濃度が95 mg/kgであること報告し、しかもコケの水銀濃度は大気中水銀濃度と相関関係にあり、水銀採掘が重大な大気中の水銀汚染を引きここしていることを示唆した71)

万山水銀鉱山地区の表層土の水銀濃度も790 mg/kgと高い。さらにこの鉱山の下流24 km地点の河岸近くの土壌中の水銀濃度は24mg/kgと高く、水銀汚染が広範囲であることが示されている72)。この鉱山地区の土壌から23 μg/kgのメチル水銀が検出されている。同様に呉川水銀鉱山地区の土壌からも0.69~20 μg/kgのメチル水銀が検出されている。水田のメチル水銀濃度がトウモロコシ畑より高く、このことは水田水の水銀汚染の関与を示唆するものである。

万山、呉川、濫木廠、銅仁地区から収集した表層水から水銀が24.8~10,580 ng/L検出されている73,74)。煆焼堆積物(calcines piles)からの排水のpHが10.6~11.8であるため水銀が溶解し、300~1,900 ng/Lと高濃度となる。煆焼と水との反応により鉱山排液の水銀濃度は上昇するためから鉱滓から河川への水銀の流出を制御することが重要となる75)

水銀採掘にともない食物への水銀汚染が問題視されている76)。濫木廠水銀鉱山地区では土壌中の水銀汚染によりグリーンキャベツの水銀汚染が生じている。万山水銀鉱山地区で採取された野菜からは5~1,890 μg/kg(湿重量)、米からは4.9~215 μg/kg(乾燥重量)と高濃度の水銀が検出されている。しかも米の中にもメチル水銀が174 μg/kg含まれており、この地区の住民は魚介類摂取に依存しない米食によるメチル水銀の曝露がある。

万山水銀鉱山周辺に居住する住民の水銀曝露に関する調査が行われている。Liらは2つの村、すなわち大水渓村と下場渓村、の住民の頭髪水銀を測定した77)。大水渓村の住民の総水銀濃度は5.5±2.7 μg/gで、メチル水銀は1.9±2.7 μg/gであり、下場渓村の住民の総水銀濃度は3.3±1.4 μg/gで、メチル水銀は1.2±0.5 μg/gであり、総水銀濃度とメチル水銀の濃度との間には相関関係(r=0.42、P<0.01)があることが認められた。また、この地区も米の総水銀やメチル水銀濃度も高値を示し、万山水銀鉱山地区の2つの村の住民に対し、水銀曝露の存在することが報告された。

呉川水銀鉱山周辺の住民の水銀曝露を頭髪や米の水銀濃度から曝露評価を試みた研究では78)、水銀蒸気濃度は水銀鉱石精錬作業場周辺で最も高く(40 μg/m3)、しかも米の総水銀濃度は6.0~113 ng/gであり、メチル水銀濃度も3.1~13.4 ng/gと高値であった。また、頭髪総水銀濃度は精錬作業場の労働者では平均33.9 μg/gや精錬作業場近接の住民では平均21.5 μg/gと高値であった。水銀鉱山周辺住民は水銀蒸気曝露以外にも米の摂取によるメチル水銀曝露の潜在的な危険性があることが示された。また、呉川地区の手掘り水銀鉱山鉱夫22名の水銀曝露による健康影響調査では、精錬作業者の尿中水銀濃度は平均1,060 μg/g Cr、頭髪総水銀濃度は平均69.3 μg/g、メチル水銀濃度は平均2.32 μg/gと極めて高く、大量の水銀蒸気に曝露されていたと考えられる。健康影響評価では近位尿細管障害の指標である尿中β2-マイクログロブリン量が鉱夫で平均248 μg/g Crと対照群の平均73.5 μg/g Crと比べて高値であり、腎機能への影響を示唆している。さらに、鉱夫6人に手指や眼瞼の振戦、歯肉炎などの中毒症状が観察され、呉川地区の手掘り水銀鉱山鉱夫の水銀蒸気曝露が深刻であったことが報告されている79)

②中国の金鉱山地域の水銀汚染

Fengらは陝西省の潼関金採掘地域の大気、堆積物、土壌、農作物の水銀濃度を測定し、この地区の水銀汚染について調査した80)。金採掘周辺の大気中の水銀濃度は18 μg/m3であり、河川水の水銀濃度は0.24~880 μg/Lである。堆積物中の水銀濃度は0.90~1,200 mg/kgで、金採掘近くの土壌中では0.9~76 mg/kgの水銀が検出され、かなり汚染されていることを報告している。また、野菜や小麦からは42~640 μg/kgの水銀が検出され、中国の野菜や食物に対する指針値10 μg/kg(魚介類は20 μg/kg)より高値であることが示された。

Linらは江西省徳興郡の金鉱山操業によって生じる水銀汚染調査を実施した81)。金採掘場周辺の大気中水銀濃度は1.95~2.84 mg/m3で、基準値の上限である0.01 mg/m3を超えていた。排液中の水銀濃度も0.5~1.0 mg/Lであり、基準値0.05 mg/Lの約10~20倍の値を示したが、この排液は直接河川に放出されていた。また尾鉱からは100~300 mg/kgの水銀が検出され、金採掘作業場周辺の土壌中の水銀濃度は1,100 mg/kgと報告された。

金採掘に伴う水銀汚染による住民の健康影響について、Tianらは山西省の金鉱山周辺の環境調査と居住者の腎機能への影響を調査した82)。この地域の大気中水銀濃度は年間を通じて79~240 ng/m3(対照地区9.8 ng/m3)であり、またこの地区を流れる河川の水銀濃度は20 μg/Lと高値であった。この地域の住民の尿中水銀は1.24±3.80 μg/Lと、対照地区の住民の約2倍であり、尿中β2-マイクログロブリン量も228.98±3.80 μg/g Crと、対照群158.02±4.01 μg/g Crに比べ、有意に高値であった。しかし、尿中N-アセチル-D-グルコサミダーゼ活性や尿中アルブミン量については両者間で差が認められなかった。この結果、水銀汚染地域の住民は少なからず腎機能への影響が認められ、しかも尿中β2-マイクログロブリンは水銀による腎障害の早期指標であると示唆された。

③フィリピンの金鉱山地区の水銀汚染

Appleton らは手掘りの金採掘が行われている東部ミンダナオ島Agusan川周辺の水銀汚染を調べた83)。Diwalal川下流の川底の堆積物中には20 mg/kg、河川水には2,906 μg/Lの水銀が検出された。Diwalal地区での金採掘により水銀に汚染されたNaboc川を灌漑用水に用いているミンダナオ島Monkayo近くのNabocの水田の水銀汚染をついても調べ、水田の土壌中の水銀濃度は平均24 mg/kgであり、非汚染地区の土壌(0.05~0.99 mg/kg)より非常に高い濃度あった。Marambaらは西ミンダナオ島Sibuta地区で金採掘に伴う環境への影響を調べ、Lalab小学校、Libay小学校そしてLibay Barangayオフィスの大気中の水銀濃度はそれぞれ13.44、4.78、9.67 mg/m3であり、許容濃度(0.015 mg/m3)より著しく高値であった84)

④タイの金鉱山地区の水銀汚染

タイでは小規模金採掘作業がPhichit省のPhanom Pha地区で行われている。Umbangtaladらはこの地区の環境中の水銀汚染と鉱夫や学童の水銀曝露の評価を行った85)。鉱山周辺の環境モニタリングでは、沈殿物中に102~325 μg/kg(乾燥重量)、また水に4 μg/Lの高濃度水銀が検出された。金のアマルガム化を行っている地域では、大気からの水銀の沈着は1日当たり1.28 μg/100 cm2であり、土壌表面の水銀濃度は20,960 μg/kg(乾燥重量)と算出された。

鉱夫79人の尿中水銀濃度を測定した結果、金回収作業に直接携わっている群(グループ1)と間接的に携わっている群(グループ2)の尿中水銀濃度は各々32.0 μg/g Crと20.4 μg/g Crであり、水銀の生物学的許容濃度35 μg/g Crを超えてはいない。また、グループ1と2の頭髪水銀濃度は非曝露者群との間に有意差は認められなかった。危険因子の中で、性や自然食物の生産と消費が鉱夫の尿中水銀濃度に影響を及ぼす2つの重要な変数であり、また危険指数を個人の無機水銀曝露量に基づいて算出した時、安全レベルを1とすると、グループ1は16~218倍高い値を示し、グループ2は0.03~0.39倍と低値であった。汚染地域の食物を摂食し、しかもこの地区で働いているグループ1は金採掘に伴い潜在的に高濃度の水銀曝露を受けていることを示唆する結果であった。金鉱山周辺にある小学校学童59人の尿中水銀はグループ1の子供で15.82 μg/g Cr、グループ2の子供では9.95 μg/g Crであった。この学童59人の頭髪水銀濃度は0.93 μg/g と対照群地区の子供の値と差異はなかった。子供の尿中水銀に影響を与える変数は性と個々の衛生状態であるが、危険指数は1以下と推測された。以上より、金鉱山地域に住む子供は鉱山で働く大人からの間接的曝露があると考えられた。

⑤インドネシアの金鉱山地区の水銀汚染

インドネシアの2つの小規模金鉱山(中央カリマンタンのGalangan地域と北スラウェシのTalawaan地域)で水銀の環境および健康評価が行われた86)。環境評価ではGalangan鉱山を流れるKatingan川上流の堆積物の水銀濃度は平均0.38 μg/gであったが、下流堆積物の水銀濃度の平均値は2.87 μg/g、2.19 μg/g、2.33 μg/gと高値を示し、堆積物の深刻な水銀汚染が認められた。対象住民281人に水銀曝露評価の他に、医学的、神経学的および神経心理学的検査が行われ、アマルガム燃焼作業に従事している住民(鉱夫)で水銀曝露が極めて高かった。カリマンタン地区ではアマルガム燃焼作業者の尿中水銀濃度が平均69.35 (0.72~1697.39) μg/g Cr、血液中水銀濃度が平均38.92 (2.0~1,429) μg/Lであり、スラウェシ地区では平均尿中水銀濃度が31.89 (0.48~232.82) μg/g Cr、平均血液中水銀濃度が27.43 (2.0~186.0) μg/Lであった。鉱夫の多くは典型的な無機水銀中毒症状(運動失調、振戦、拮抗運動反復運動不全、記憶減退など)を示し、スラウェシ地区ではアマルガム燃焼作業者の55%、カリマンタン地区ではアマルガム燃焼作業者の62%が水銀中毒に罹患していた。インドネシアの小規模金鉱山において、大気中に放出されるアマルガム燃焼による水銀を減らすことが中毒患者の減少に繋げることができると結論した。

⑥その他の金鉱山地域における水銀汚染と健康影響

金鉱山では鉱夫のみならず女性や子供も働いており、アフリカにおける水銀曝露の実態が明らかになってきた87)。セネガルKedougo地区では金抽出や金−水銀アマルガムの燃焼に女性や子供が関与しており、Tenknto地区では水銀によるアマルガム化は女性が子供とともに行っている。アフリカの手掘り金鉱山における労働人口のうち女性や子供の占める割合は、南アフリカで労働人口500人中の5%、マリで労働人口100,000人以上中の50%に相当する。タンザニでも3,000人以上の子供が手掘りの金採掘作業に従事していると推定された。

Bose-O’Reillyらはインドネシアやジンバブエで手掘りの金採掘作業を行っている子供166人(9~17歳)を対象に健康調査を行った88)。水銀を取扱っている子供の血中水銀濃度は12.4±14.66 μg/L(対照群2.95±2.21 μg/L)、尿中水銀濃度は47.35±146.35 μg/L(対照群0.58±0.54 μg/L)であり、中には水銀蒸気曝露に起因する無機水銀中毒症状(運動失調、流涎)を呈した小児もいることや神経心理検査の鉛筆タッピング (pencil tapping) 検査やマッチボックス検査で対照群に比べ、曝露群が統計的に劣っていることが報告された。筆者らは50以上の国で多くの小児が小規模金鉱山地区に住み、水銀蒸気曝露の危険性に晒されていることを示唆し、かつ小児の健康被害防止のために水銀使用量の削減や幼年労働の禁止の必要性を説いた。

Bose-O’Reillyらは小規模金鉱山地区の授乳婦の母乳を介する乳児への水銀移行の問題について報告した89)。授乳婦の母乳46検体の水銀濃度は中央値1.87 μg/Lであり、文献値よりも高値であった。しかも、14検体は4 μg/Lを超え、最も高い値は1,491 μg/Lを示した。米国環境保護庁(EPA)が推奨する無機水銀の摂取量0.3 μg/kg体重/日を超える検体が46検体中22もあったことから、小規模金鉱山地域で水銀曝露を受けた授乳婦の母乳を介する乳児への水銀移行に関する知識の啓発活動を行う必要性を説いた。

最近、アマゾン流域の小規模金鉱山に従事する鉱夫の水銀蒸気曝露による視覚機能障害が報告されている。Costaらは電気生理学的な手法により金鉱山鉱夫の視覚への影響を網膜電図や視覚誘発電位で調べた結果90)、網膜電位の低振幅や視覚誘発電位の潜時遅延が認められ、水銀蒸気曝露による視覚系への影響を示唆している。視覚影響は職業的に水銀蒸気に曝露された労働者でも認められている91)。蛍光灯製造工場に従事する作業者35名 (尿中水銀濃度41.15±1.72 μg/g Cr) と対照者34名 (尿中水銀濃度2.39±1.3 μg/g Cr) の視野欠損を調査すると、自動視野測定および短波長自動視野測定で曝露群の視野感度の低下が報告されている。

タンザニアの小規模金鉱山地域で環境および健康評価が国連工業開発機構(UNIDO)の手により行われた86)。水銀曝露地区(Rwamagasa)の住民180名と対照地区(Katoro)の住民30名について、医学的、神経学的、神経心理学的検査が実施された。Rwamagasa地区のアマルガム燃焼作業者104人の平均血中水銀濃度および尿中水銀濃度は各々4.62 (0.73~33.30) μg/Lと6.15 (0.12~36.77) μg/g Crであり、Katoro地区住民の血中水銀1.05 (0.22~2.29) μg/Lや尿中水銀0.24 (0.04~0.92) μg/g Crと比べてかなり高値であった。アマルガム燃焼作業者うち25名に無機水銀中毒症状である振戦、流唾過多、運動失調、歯肉の色素沈着そして感覚障害なども見られた。対照群と比べ、自覚症状の食欲不振、記憶力減退、倦怠感などの愁訴率は高値であり、鉛筆タッピングやマッチボックス検査成績は悪かった。

⑦小規模金鉱山地区における水銀による環境汚染および健康影響の対策について

世界各国で小規模金鉱山周辺での水銀汚染が広がる中、水銀による環境汚染および健康影響に対する対策が国連問題の1つとして取上げられた66)。2002年にUNIDOの下で包括的水銀計画(Global Mercury Project)が世界的に有名な手掘金採掘地であるブラジル・アマゾン川のTapajos流域で実施された。この計画は簡単な技術導入により水銀放出の減少、教育キャンペーンそして環境意識の向上を図り、水銀による環境汚染や健康影響の減少を目指すものである。141箇所の鉱山地区で4,200人が訓練を受け、20項目の作業指数により訓練効果が評価された(表1)。訓練後、120日目の評価で、最も達成した項目は「水と森林の保護」、「水銀使用の減少」、「健康と衛生」であり、「鉱山の合法化」や「金回収の増加技術」は他の項目ほど達成していない。しかしながら、全体の約29%が達成され、その成果としてTapajos流域では年間1,762 kg、水銀の環境放出が全体の約10%減少できたと推定された。

表1 一般目標と作業指数(Performance indicator)
一般目標 作業指数
鉱山地区の合法化 1.環境許可
2.鉱業許可証
3.金の販売のために発行されるレシート
金の回収を増加させる技術 4.金を見つけるために、効果的方法の使用
5.器材の正しく運転
6.純金を回収する方法
7.器材のメンテナンスと供給
水と森林の保護 8.尾鉱による廃坑の充填
9.劣化した地区の再植林
10.尾鉱の封じ込め
水銀使用の減少 11.水銀再生とリサイクル
12.指定の場所のアマルガム化
13.水銀回収蒸留装置の使用
14.水銀を用いない技術
健康と衛生 15.便所の使用
16.濾過された飲料水
17.マラリアの予防
18.安全性
19.適当な生ゴミ処理機
20.鉱夫の意識の改善

Ⅴ.結論

今年度の文献レビューにより、以下のことが示唆された。(1)臍帯血水銀濃度は妊娠後期のメチル水銀レベルを反映する。(2)胎児期のメチル水銀曝露は小児の神経発達に悪影響を及ぼし、一方、多価不飽和脂肪酸は神経発達に有益な影響を及ぼすと推定された。(3)メチル水銀のほか、鉛、PCB、ヒ素、多価不飽和脂肪酸などが小児期の神経発達に影響し、しかも相互に影響を及ぼす可能性があるので、研究デザインの段階で重要な交絡因子として考慮する必要がある。(4)メチル水銀は自律神経の副交感神経機能低下ないし交感神経優位状態を引き起こす可能性が高いと推定された。

途上国の水銀汚染に関しては、小規模金鉱山周辺や水銀鉱山周辺の採掘活動に伴う水銀による環境汚染や作業者を含む地域住民の健康被害の実態が明らかになった。アジア地域の水銀汚染や健康被害が深刻な社会問題となっている。アフリカでは手掘金鉱山で働いている女性や子供の水銀曝露による健康影響が危惧された。小児の健康被害予防のためにも水銀使用の削減や幼年労働の禁止が必須である。一方、小規模金鉱山の水銀による環境汚染や健康被害の防止計画がUNIDOによりブラジル・アマゾン川Tapajos流域で実施され、大気中水銀の放出削減効果が見られた。にもかかわらず、多くの発展途上国の小規模金鉱山の鉱夫は水銀による環境汚染や健康被害に対する意識が未だ低い。環境や健康に対しての鉱夫の意識の改善のための教育、水銀によらない金採掘方法の導入、水銀回収蒸留装置による水銀の回収などの問題をどのように克服するかが今後の課題となる。

Ⅵ.次年度以降の計画

小児の神経に影響する血中鉛濃度はこれまで10 μg/dL以上と考えられていたが92) 、2003年以降の鉛の疫学的研究によると93-96)、3~10歳児の知能指数(IQ)などへの鉛影響は5 μg/dl前後から現れ始めている。2006年6月にイタリア・ブレシアで開催された国際労働衛生委員会(ICOH)の2つの合同科学委員会の鉛、水銀およびマンガンの神経毒性に関する国際ワークショップは、小児の血中鉛レベルを5 μg/dLまで下げるべきとする宣言を採択した97)。フェロー諸島出生コホート研究では臍帯血鉛濃度も測定されたが、中央値が1.7 μg/dLであったので鉛の影響はないと当時判断されていた32)。しかし、臍帯血中鉛の範囲は1~11 μg/dLであったので、今後鉛を含めて再検討する必要があるかもしれない。同様に、セイシェル小児発達研究でも鉛濃度は低かったという理由で、神経発達影響の評価の際に無視されている。文献的には、PCBとメチル水銀、セレンあるいは多価不飽和脂肪酸とメチル水銀の間で相互作用が論じられてきた4,37,44,47,48,98-100)。上述したように、鉛の低濃度曝露が、メチル水銀曝露とともに、神経影響に深く関わっているので、鉛とメチル水銀の間の相互影響についても今後検討することが望まれよう。

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A review on health effects of methylmercury exposure in humans

Katsuyuki Murata1, Minoru Yoshida2, Kunihiko Nakai3, Mineshi Sakamoto4, Toyoto Iwata1, Miyuki Shimada3, Kozue Yaginuma-Sakurai3

1 Department of Environmental Health Sciences, Akita University Graduate School of Medicine
2 Hachinohe University Faculty of Human Health
3 Department of Environmental Health Sciences, Tohoku University Graduate School of Medicine
4 Department of Epidemiology, National Institute for Minamata Disease

Abstract

Fifty years have passed since the outbreak of Minamata disease and methylmercury poisoning disasters like the Minamata disease due to industrial effluents or methylmercury-containing fungicide intoxication have scarcely happened in developed countries. However, the debate on health issue of low-level exposure to methylmercury in humans remains unsolved and environmental and health issues of widespread mercury contamination have occurred in gold and mercury mining areas of developing countries. In this article, we provide an overview of studies addressing these health effects of methylmercury and mercury, by using the PubMed of the US National Library of Medicine.

The following suggestions were obtained concerning low-level methylmercury exposure: (1) The cord-blood methylmercury concentration reflects the exposure level at parturition, judging from a paper of Sakamoto et al. (2) Although the debate on the effect of methylmercury on infant development between the Faroese birth cohort study and the Seychelles child development study has continued since 1998, recent evidence suggests that fetal exposure to methylmercury adversely affects child neurodevelopment and that polyunsaturated fatty acids such as docosahexaenoic and eicosapentaenoic acids have a beneficial effect on child development. (3) Several chemical substances such as methylmercury, polychlorinated biphenyl, lead, and polyunsaturated fatty acids have been reported to have an adverse or beneficial impact on the nervous system in children. When assessing such a subtle effect of low-level exposure to one chemical substance, other chemicals should be considered as crucial confounders. (4) Whether methylmercury affects coronary heart disease or not remains unclear, but the exposure seems to induce parasympathetic hypofunction or a sympathodominant state in humans.

Keywords: Methylmercury; Low-level exposure; Infant development; Gold and mercury mining