世界の水銀汚染問題
世界の主な水銀汚染
世界の主な水銀汚染
水銀汚染の発生源にはいくつかの種類があります。以前多かった工場廃液や有機水銀系農薬による汚染は、現在でも開発途上国を中心に発生しているものの、次第に減少しています。これに対して近年問題となっているのは、金採掘による水銀汚染、廃鉱山からの水銀汚染、そして工場跡地の残留水銀処理問題などです。
現在、こうした問題を抱える地域での水銀汚染への対応や住民の健康状態の調査と対策が急がれており、国立水俣病総合研究センターでもこれに積極的に取り組んでいます。
自然環境の価値
人類は、土地を利用するために自然を破壊してきました。自然のままにしておくよりも、手を入れて利用したほうが人間にとって「役に立つ」と考える人は少なくありません。しかし、自然は人間にとって役に立たないのでしょうか。
森は酸素を作り出し、海は気候を調節し、干潟は水を浄化しています。ある研究者は、こうした「サービス」を自然のかわりに人工的な設備で行うといくらかかるか計算しました。自然は、地球全体では3,500兆円以上にもあたるサービスをしてくれているのです。
自然を破壊しつづけるならば、それまで自然がただでしてくれていたことを、人間がお金をかけて行わなければならなくなります。
世界の水銀汚染研究の現状
ブラジル、アマゾン川流域では、1970年代終わり頃から川底やジャングルの堆積土中の砂金採掘が盛んに行われ、金の精練に使用されている金属水銀による汚染が深刻化しています。タンザニア、フィリピン、インドネシア、中国等の国々でも同様な汚染が起きており世界の関心を集めています。これまでの研究で、放出された水銀が河川系に入り、メチル水銀に変化して、魚類などに蓄積していることが明らかになっています。現在、金の採掘に携わる労働者の無機水銀中毒ばかりでなく、下流の住民へのメチル水銀による健康被害も危惧されています。このため、多くの国々の研究者が現地入りし、汚染の実態解明に向けた共同調査研究が熱心に進められています。
金採掘に伴って放出される水銀の環境中での循環(アマゾンの例)
金属水銀(Hg0)は金採掘用イカダから放出され、そのうち55~60%は蒸発し、40~45%は水中に落ちる。蒸発したHg0は大気水の水(H2O)、オゾン(O3)で酸化され水銀イオン(Hg2+)となる。Hg2+は雨と共に地上へ落ちる。もし土壌が酸性(pH4程度)ならHg2+は有機化してメチル水銀(Hg(CH3)+)となる。Hg(CH3)+はただちに近くにいる生き物に取り込まれ食物連鎖網にはいる。