水銀に関する水俣条約 Minamata Convention on Mercury
条約の概要
水銀の産出、貿易、製品の製造、排出、保管、廃棄など、水銀のライフサイクル全体にわたって規制する国際条約です。
条文の第1条には「人の行為により排出された水銀及び水銀化合物から、人の健康や環境を守ること」を目的とすることが書かれています。略称として、「水銀条約」や「水俣条約」と呼ばれています。
条約の発効
条約の採択
2013年1月にスイス・ジュネーブで開催された政府間交渉委員会第5回会合で条約の採択が全会⼀致で決定され、同年10月に熊本市及び水俣市で条約の採択・署名のための「水銀に関する水俣条約外交会議」が開催されました。
条約の発効
2017年6月には条約発効の条件である50カ国が条約を批准したため、2017年8月16日に条約が発効しました。
条約の必要性
水銀の発生
水銀は火山や海洋からの蒸発など自然に発生するもののほか、石炭の燃焼、小規模金採掘、水銀を使用する製品などからの排出など人の活動によって発生するものがあります。
水銀の危険性
排出された水銀は地球を巡って生物の体内に溜まっていくことで、人や野生生物の神経に悪影響を及ぼします。特に、胎児や赤ちゃん、子どもなどは注意が必要です。
水銀の利用
水銀の使用量は先進国では減っていますが、開発途上国などでは小規模金採掘などでまだまだ利用されています。
被害を予防するため条約による管理が必要
日本が経験した水銀汚染による健康被害や環境破壊が世界で二度と繰り返されないようにするためには、水俣条約による国際的な水銀の管理が必要です。
条約の主な内容
鉱山からの水銀産出の禁止
水銀を鉱山から採掘することができなくなります。
水銀の貿易を制限
水銀を自由に輸出したり輸入したりすることができなくなります。
水銀を使った製品の製造・輸出入の禁止
⼀定量以上の水銀を使った電池、ランプや化粧品などの製品は、2020年までに製造や輸出入ができなくなりました。
工場の製造過程での水銀の使用を禁止
塩素アルカリ工業及びアセトアルデヒド製造施設では⼀定の年限以降、製造過程で水銀を使用できなくなります。
金採掘での水銀使用を削減
国内の零細・小規模金採掘がわずかでないと判断する締約国は、水銀の使用や排出の削減のための行動計画を策定する必要があります。
環境への排出・放出を削減
水銀の大気排出量の多い産業を対象に、排出削減対策が定められます。また、水への放出削減の対象となる発生源の特定等が定められます。
条約の詳しい内容や経緯については環境省のホームページ内の水銀に関する水俣条約のページや国連環境計画(UNEP)の水銀に関する水俣条約のページを参照ください。
水俣と条約の関係
「水俣」の地名が使われている理由
「水俣条約」という名前には、水俣病と同じような健康被害や環境破壊を繰り返してはならないという決意と、こうした問題に直面している国々の関係者が対策に取り組む意思を世界で共有する意味が込められています。
また、水俣病の教訓や経験を世界に伝えるとともに、今の水俣市の姿をアピールするために「水俣条約」と名づけられました。
国立水俣病総合研究センターと条約の関係
水銀に関係する技術開発と共有・普及
- ・簡易な水銀計測技術の開発と提供
- ・現地における技術指導、研修生の受け入れ等により途上国への支援
- ・水銀に関する国際フォーラムの開催
- ・アジア・太平洋地域で実施している大気水銀モニタリングネットワークに参加