水俣病と水銀について

水俣病の原因究明

水俣病の原因究明

原因究明

昭和31年(1956)5月1日の水俣病公式発見後、熊本県や奇病対策推進委員会の依頼を受けて熊本大学医学部が行った調査で、同年11月3日にはある種の重金属に汚染された魚介類を食べたことによる中毒であろうとの報告が出されました。
しかし、原因物質の特定は困難をきわめ、有機水銀、そしてその中のメチル水銀にたどりつくまでには多数の研究者の努力と長い年月が費やされました。
この間、水俣湾の魚介類が疑われながら、国や県が漁獲禁止等の措置を講じなかったこと、チッソは昭和34年(1959)には工場内の排水が原因であることを把握していながら、排水を流し続けたことによって患者は増え続けることになりました。

熊本大学医学部水俣奇病研究班の成果

研究班では、病気の原因が水俣湾の魚介類にあると見当をつけた昭和31年(1956)11月ごろから水俣湾の魚介類をネコに食べさせる実験を始めました。翌年、武内教授と共同で実験を行っていた伊藤水俣保健所長が、ネコの発症に成功し、水俣湾でとれた魚介類が水俣病の原因であることがはっきりしました。また、世良教授も健康なネコを水俣病の発生地域に送って飼うと水俣病になることを確かめました。
続いて、研究班は病気の原因となっている物質を特定する作業に移りましたが、水俣湾から採取したヘドロや魚介類からは 10種類以上の有害物質が検出されたため、この作業はなかなか進みませんでした。
研究班が有機水銀に着目したのは昭和34年(1959)で海外の文献から水俣病と有機水銀中毒症の症状が似ていることに気付いた武内教授や徳臣助教授(当時)が有機水銀説を報告してからでした。ネコに有機水銀を与えると水俣病になったことや、喜田村教授の分析でチッソの排水口から水銀が流れ出ていることを示す証拠が得られたことから、研究班は同年7月22日に、水俣病の原因物質は有機水銀と考えられると発表しました。
これに対して、水俣湾に有機水銀があるとは考えられないという反論が寄せられました。というのは、工場では無機水銀は使っていたものの有機水銀は使っていなかったからです。当時は有機水銀を正確に分析する技術がなく、その存在を確かめるのは大変難しいことでしたが、昭和36年(1961)11月には内田教授が水俣湾の貝(ヒバリガイモドキ)から、また昭和37年(1962)8月には入鹿山教授がアセトアルデヒド生産設備から採取した触媒滓から、メチル水銀化合物(有機水銀の⼀種)を取り出すことに成功したと発表しました。

初期の研究年譜

初期の研究年譜

事項 確認された
患者累計数
昭和26年
(1951)

【社会】

・水俣湾で魚介類の死亡、変形などが目立つようになる

【原因企業】

・アセトアルデヒド合成の助触媒を二酸化マンガンから硫酸鉄(粗製)に変更
昭和28年
(1953)

【社会】

・公式に発見された最初の患者の発病はこの頃

【原因企業】

・アセトアルデヒド生成に真空蒸発真空蒸留法採用
昭和31年
(1956)

【社会】

・ネコの発病に加え水俣湾の付着貝類、海草類の死滅、魚の浮上など甚大な被害相次ぐ(S29~S34)

【原因企業】

・新プラント完成するも事故相次ぐ(廃液の異常な増加) ・付属病院院長(細川医師)、原因不明の疾患が発生と水俣保健所へ報告

【行政】

・水俣病公式発見(5月1日) ・11月厚生省厚生科学研究班(厚生科学班と表記)設置 ・奇病対策委、52人を公式に水俣(奇)病と指定

【熊本大学】

・医学部水俣奇病研究班を組織(8月) ・「学用患者」(原因究明に協力してもらう代わりに医療費の負担を求めない制度)を初めて適用(8月30日) ・第1回報告会(11月)
「奇病」は魚介類を介したある種の重金属中毒で、伝染することはないと発表。
中枢神経系の傷害が主な症状と指摘
52人
昭和32年
(1957)

【社会】

・マガキの斃死確認(熊本県水産試験場)

【原因企業】

・患者の生活状況、および臨床症状の調査(細川医師他数名) ・水俣奇病の研究組織発足(5月) ・付属病院内でネコ実験開始(5月) ・排水、海水、底質、魚介類等の汚染調査(主にマンガン) ・汚泥からタリウム・セレンを検出(12月、熊大研究班からの照会への回答)

【行政】

・厚生科学班第1回報告会(1月、重金属中毒の触媒は魚介類とするも、そのメカニズムについては不明)(報告書は3月) ・百間港浚渫(熊本県) ・伊藤水俣保健所長
ネコに水俣湾の魚介を投与、10日後に発症(4月)
・厚生科学班第4回報告会(7月)
工場廃液の関与を疑う
・ネコ飼育実験の結果等から、水俣湾の魚介類を原因と推定 中毒物質については保留(熊本県衛生部) ・熊本県衛生部
食品衛生法適用による水俣湾産魚介類販売禁止の可否を厚生省に打診(8月)
・厚生省、熊本県に対し食品衛生法適用はできないと回答(9月)・・・これは漁獲禁止をしないことを意味する ・厚生科学班松田班長の学会報告(10月)
中毒原因の候補には、マンガン、銅、セレン、タリウム等の塩類があったが、いずれも原因物質としての充分な根拠が得られなかった。このときまで水銀は注目されていない。(報告書は12月)

【熊本大学】

・第2回報告会(2月) ・水俣湾内の漁獲禁止措置が必要と結論
64人
昭和33年
(1958)

【社会】

・〔水俣病〕という言葉がマスコミに定着 ・アサリ、カキ等の斃死、底生生物幼生プランクトンが百間港にいないことを報告(10月、熊本県水産試験場)

【原因企業】

・細川医師、脳性小児麻痺様の子ども5人を診察(のちに胎児性水俣病とわかる) ・酢酸設備、連続母液酸化装置完成により生産急増 ・「水俣奇病に対する当社の見解」発表(7月)
厚生省に対し原因物質特定までは工場排水を疑うべきではないと主張
・アセトアルデヒド排水経路を百間港から八幡プール経由で水俣川河口へ変更(9月)

【行政】

・厚生科学班報告会にて水俣工場の汚泥分析結果が検討される(2月)
水俣工場が原因物質を生産と確認し、実験的再現を今後の課題とする

【熊本大学】

・セレンが最も疑わしいとの説(第28回衛生学会) ・宮川教授、タリウム説発表(精神神経学会) ・武内教授、新日窒との懇談会でセレン・タリウム・マンガンを原因と断定することは困難と発言(7月)

【その他の研究者】

・MacAlpine博士、学術誌に有機水銀中毒の可能性を示唆(9月、荒木博士と共著)
68人
昭和34年
(1959)

【社会】

・八幡(水俣川河口)の住民に初めて患者が発生(3月)、その後発症相次ぐ ・芦北郡湯浦町でネコ多数発病 ・2月以降獅子島でネコ発症(1カ月に18匹) ・出水で患者発生、発生地域の南への拡大開始(6月) ・出水で乾燥貝類投与ネコ発症(9月) ・漁民騒動(2,000人が集結、国会調査団へ陳情後工場へ突入)負傷者100人以上 ・見舞金契約(12月)

【原因企業】

・細川医師、アセトアルデヒド・酢酸製造工程廃液を用いたネコ400号実験開始(7月) ・熊本県議会へ有機水銀説の反論書提出(8月)
魚介類からアルキル水銀を抽出できないことを根拠に有機水銀説に異議、工程内で有機水銀が生成するという事実も文献記載もないと主張
・ネコ400号(廃液を混ぜた餌を直接投与)発症(10月) ・水俣川河口への排水を中止、百間港排水路へ戻す ・「水俣病原因物質としてのʼ有機水銀説ʼに対する見解」という反論文を国会調査団へ渡す(11月) ・会社から細川医師に対しネコ実験中止を指示(11月)。廃液を混ぜた餌の直接投与による新たなネコ発症実験を中止 ・廃水処理装置(サイクレーター)完成(12月)(メチル水銀除去には効果がなかった)

【行政】

・厚生省食品衛生調査会合同委員会(10月)水俣食中毒特別部会有機水銀中毒説を報告 ・通産省、新日窒へ水俣川河口排水路の廃止と廃水処理装置の年内完成を指示(10月) ・国会調査団水俣を視察(11月) ・食品衛生調査会常任委員会(11月)
有機水銀化合物を主因とし水俣湾産魚介類の大量摂取で起こる主として中枢神経の傷害される中毒性疾患との見解発表後水俣食中毒特別部会を解散
・水俣病患者診査協議会(12月、厚生省公衆衛生局)

【熊本大学】

・報告第3報(3月)
脳性麻痺様幼児多発と指摘(喜田村教授)
・研究班報告会(7月)
「魚介類を汚染した毒物として水銀がきわめて注目される」と結論(武内、徳臣、有機水銀説を展開)
・入鹿山教授、酢酸設備から水銀スラッジ採取(8月)

【その他の研究者】

・東工大 清浦教授
有機水銀説に慎重論(8月)
・日本化学工業協会(日化協)大島理事、有機水銀説に疑問を呈し爆薬説を提唱(9月)
68人
昭和35年
(1960)

【原因企業】

・細川医師、廃液を混ぜた餌の直接投与によるネコ発症実験を再開(8月)

【行政】

・水俣病総合調査研究連絡協議会設置
2月に第1回会合
・熊本県衛生研究所、八代海沿岸住民の毛髪水銀調査開始(2月) ・鹿児島県、出水、米ノ津、東町(長島)等の住民の毛髪水銀調査開始(5月)

【熊本大学】

・喜田村教授、毛髪水銀の有用性に気付き、患者らの毛髪を調査(2月) ・第57回精神神経学会(4月)
有機水銀説及びタリウム説を発表、討論有機水銀説に支持が集まる
・宮川教授死去(9月)、タリウム説自然消滅 ・内田教授、水俣湾のアサリから含硫有機水銀化合物の結晶化に成功(9月)

【その他の研究者】

・Kurland博士(米国国立衛生研究所)、有機水銀説を支持(2月)また、サイクレーターが有害物質除去に役立たないと語る ・日化協田宮委員会発足(4月) ・連絡協議会第2回会合(4月)清浦教授有毒アミン説発表
87人
昭和36年
(1961)

【原因企業】

・排水中からアルキル水銀化合物(有機水銀)を確認(7月) ・廃液からメチル水銀を抽出、結晶化(12月)

【熊本大学】

・原田義孝教授、小児科学会で九州地方会にて胎児生水俣病の実体を初めて紹介(6月) ・入鹿山教授ら、魚介の水銀は有機水銀の形で取り込まれると、KumamotoMedical、Journal誌に発表(10月) ・内田教授 硫化メチル水銀結晶化について学会発表(11月)

【その他の研究者】

・清浦教授、腐敗アミン説(6月、東邦医会誌)
87人
昭和37年
(1962)

【熊本大学】

・入鹿山教授ら、触媒滓から塩化メチル水銀抽出に成功(8月)
昭和40年
(1965)

【社会】

・新潟で水俣病患者発見、新潟県の正式発表は6月
新潟26人
昭和42年
(1967)

【行政】

・厚生省、新潟水俣病の原因を昭和電工鹿瀬工場のアセトアルデヒド製造工程で副生されたメチル水銀化合物の食物連鎖による汚染と結論(8月)
新潟27人
昭和43年
(1968)

【原因企業】

・アセトアルデヒド製造工程稼働停止

【行政】

・政府統⼀見解(9月)
チッソ水俣工場のアセトアルデヒド・酢酸製造行程中で副生したメチル水銀化合物が原因
新潟35人
昭和26年(1951)
【社会】
・水俣湾で魚介類の死亡、変形などが目立つようになる
【原因企業】
・アセトアルデヒド合成の助触媒を二酸化マンガンから硫酸鉄(粗製)に変更
昭和28年(1953)
【社会】
・公式に発見された最初の患者の発病はこの頃
【原因企業】
・アセトアルデヒド生成に真空蒸発真空蒸留法採用
昭和31年(1956)
【社会】
・ネコの発病に加え水俣湾の付着貝類、海草類の死滅、魚の浮上など甚大な被害相次ぐ(S29~S34)
【原因企業】
・新プラント完成するも事故相次ぐ(廃液の異常な増加)
・付属病院院長(細川医師)、原因不明の疾患が発生と水俣保健所へ報告
【行政】
・水俣病公式発見(5月1日)
・11月厚生省厚生科学研究班(厚生科学班と表記)設置
・奇病対策委、52人を公式に水俣(奇)病と指定
【熊本大学】
・医学部水俣奇病研究班を組織(8月)
・「学用患者」(原因究明に協力してもらう代わりに医療費の負担を求めない制度)を初めて適用(8月30日)
・第1回報告会(11月)
「奇病」は魚介類を介したある種の重金属中毒で、伝染することはないと発表。
中枢神経系の傷害が主な症状と指摘
確認された患者累計数:52人
昭和32年(1957)
【社会】
・マガキの斃死確認(熊本県水産試験場)
【原因企業】
・患者の生活状況、および臨床症状の調査(細川医師他数名)
・水俣奇病の研究組織発足(5月)
・付属病院内でネコ実験開始(5月)
・排水、海水、底質、魚介類等の汚染調査(主にマンガン)
・汚泥からタリウム・セレンを検出(12月、熊大研究班からの照会への回答)
【行政】
・厚生科学班第1回報告会(1月、重金属中毒の触媒は魚介類とするも、そのメカニズムについては不明)(報告書は3月)
・百間港浚渫(熊本県)
・伊藤水俣保健所長
ネコに水俣湾の魚介を投与、10日後に発症(4月)
・厚生科学班第4回報告会(7月)
工場廃液の関与を疑う
・ネコ飼育実験の結果等から、水俣湾の魚介類を原因と推定 中毒物質については保留(熊本県衛生部)
・熊本県衛生部
食品衛生法適用による水俣湾産魚介類販売禁止の可否を厚生省に打診(8月)
・厚生省、熊本県に対し食品衛生法適用はできないと回答(9月)・・・これは漁獲禁止をしないことを意味する
・厚生科学班松田班長の学会報告(10月)
中毒原因の候補には、マンガン、銅、セレン、タリウム等の塩類があったが、いずれも原因物質としての充分な根拠が得られなかった。このときまで水銀は注目されていない。(報告書は12月)
【熊本大学】
・第2回報告会(2月)
水俣湾内の漁獲禁止措置が必要と結論
確認された患者累計数:64人
昭和33年(1958)
【社会】
・〔水俣病〕という言葉がマスコミに定着
・アサリ、カキ等の斃死、底生生物幼生プランクトンが百間港にいないことを報告(10月、熊本県水産試験場)
【原因企業】
・細川医師、脳性小児麻痺様の子ども5人を診察(のちに胎児性水俣病とわかる)
・酢酸設備、連続⺟液酸化装置完成により生産急増
・「水俣奇病に対する当社の見解」発表(7月)
厚生省に対し原因物質特定までは工場排水を疑うべきではないと主張
・アセトアルデヒド排水経路を百間港から八幡プール経由で水俣川河口へ変更(9月)
【行政】
・厚生科学班報告会にて水俣工場の汚泥分析結果が検討される(2月)
水俣工場が原因物質を生産と確認し、実験的再現を今後の課題とする
【熊本大学】
・セレンが最も疑わしいとの説(第28回衛生学会)
・宮川教授、タリウム説発表(精神神経学会)
・武内教授、新日窒との懇談会でセレン・タリウム・マンガンを原因と断定することは困難と発言(7月)
【その他の研究者】
・MacAlpine博士、学術誌に有機水銀中毒の可能性を示唆(9月、荒木博士と共著)
確認された患者累計数:68人
昭和34年(1959)
【社会】
・八幡(水俣川河口)の住民に初めて患者が発生(3月)、その後発症相次ぐ
・芦北郡湯浦町でネコ多数発病
・2月以降獅子島でネコ発症(1カ月に18匹)
・出水で患者発生、発生地域の南への拡大開始(6月)
・出水で乾燥貝類投与ネコ発症(9月)
・漁民騒動(2,000人が集結、国会調査団へ陳情後、工場へ突入)負傷者100人以上
・見舞金契約(12月)
【原因企業】
・細川医師、アセトアルデヒド・酢酸製造工程廃液を用いたネコ400号実験開始(7月)
・熊本県議会へ有機水銀説の反論書提出(8月)
魚介類からアルキル水銀を抽出できないことを根拠に有機水銀説に異議、工程内で有機水銀が生成するという事実も文献記載もないと主張
・ネコ400号(廃液を混ぜた餌を直接投与)発症(10月)
・水俣川河口への排水を中止、百間港排水路へ戻す
・「水俣病原因物質としてのʼ有機水銀説ʼに対する見解」という反論文を国会調査団へ渡す(11月)
・会社から細川医師に対しネコ実験中止を指示(11月)。廃液を混ぜた餌の直接投与による新たなネコ発症実験を中止
・廃水処理装置(サイクレーター)完成(12月)(メチル水銀除去には効果がなかった)
【行政】
・厚生省食品衛生調査会合同委員会(10月)
水俣食中毒特別部会有機水銀中毒説を報告
・通産省、新日窒へ水俣川河口排水路の廃止と廃水処理装置の年内完成を指示(10月)
・国会調査団水俣を視察(11月)
・食品衛生調査会常任委員会(11月)
有機水銀化合物を主因とし水俣湾産魚介類の大量摂取で起こる、主として中枢神経の傷害される中毒性疾患との見解発表後、水俣食中毒特別部会を解散
・水俣病患者診査協議会(12月、厚生省公衆衛生局)
【熊本大学】
・報告第3報(3月)
脳性麻痺様幼児多発と指摘(喜田村教授)
・研究班報告会(7月)
「魚介類を汚染した毒物として水銀がきわめて注目される」と結論(武内、徳臣、有機水銀説を展開)
・入鹿山教授、酢酸設備から水銀スラッジ採取(8月)
【その他の研究者】
・東工大 清浦教授
有機水銀説に慎重論(8月)
・日本化学工業協会(日化協)大島理事、有機水銀説に疑問を呈し爆薬説を提唱(9月)
確認された患者累計数:68人
昭和35年(1960)
【原因企業】
・細川医師、廃液を混ぜた餌の直接投与によるネコ発症実験を再開(8月)
【行政】
・水俣病総合調査研究連絡協議会設置
2月に第1回会合
・熊本県衛生研究所、八代海沿岸住民の毛髪水銀調査開始(2月)
・鹿児島県、出水、米ノ津、東町(長島)等の住民の毛髪水銀調査開始(5月)
【熊本大学】
・喜田村教授、毛髪水銀の有用性に気付き、患者らの毛髪を調査(2月)
・第57回精神神経学会(4月)
有機水銀説及びタリウム説を発表、討論有機水銀説に支持が集まる
・宮川教授死去(9月)、タリウム説自然消滅
・内田教授、水俣湾のアサリから含硫有機水銀化合物の結晶化に成功(9月)
【その他の研究者】
・Kurland博士(米国国立衛生研究所)、有機水銀説を支持(2月)また、サイクレーターが有害物質除去に役立たないと語る
・日化協田宮委員会発足(4月)
・連絡協議会第2回会合(4月)清浦教授有毒アミン説発表
確認された患者累計数:87人
昭和36年(1961)
【原因企業】
・排水中からアルキル水銀化合物(有機水銀)を確認(7月)
・廃液からメチル水銀を抽出、結晶化(12月)
【熊本大学】
・原田義孝教授、小児科学会で九州地方会にて胎児生水俣病の実体を初めて紹介(6月)
・入鹿山教授ら、魚介の水銀は有機水銀の形で取り込まれると、KumamotoMedical、Journal誌に発表(10月)
・内田教授 硫化メチル水銀結晶化について学会発表(11月)
【その他の研究者】
・清浦教授、腐敗アミン説(6月、東邦医会誌)
確認された患者累計数:87人
昭和37年(1962)
【熊本大学】
・入鹿山教授ら、触媒滓から塩化メチル水銀抽出に成功(8月)
昭和40年(1965)
【社会】
・新潟で水俣病患者発見、新潟県の正式発表は6月
確認された患者累計数:新潟26人
昭和42年(1967)
【行政】
・厚生省、新潟水俣病の原因を昭和電工鹿瀬工場のアセトアルデヒド製造工程で副生されたメチル水銀化合物の食物連鎖による汚染と結論(8月)
確認された患者累計数:新潟27人
昭和43年(1968)
【原因企業】
・アセトアルデヒド製造工程稼働停止
【行政】
・政府統⼀見解(9月)
チッソ水俣工場のアセトアルデヒド・酢酸製造行程中で副生したメチル水銀化合物が原因
確認された患者累計数:新潟35人

水俣病の治療法

治療法

初期治療

1. 進入経路を発見しその経路を断つ

2. 体内に進入したメチル水銀の排泄促進

  • ①キレート剤

    水銀と結合して尿中に排泄

  • ②SH製剤

    メチル水銀はSH基と親和性が高い。
    SH基をもつチオール樹脂の経口投与で腸管からの再吸収予防

  • ③血液透析

    SH基をもつL-システインの利用

  • ④交換輸血

3. 抗酸化剤の投与

メチル水銀は細胞内で活性酸素を増加させ、細胞傷害をひきおこすことから、水銀排泄と抗酸化剤(ビタミンEなど)の投与を平行して行うための研究が行われている。

4. 対症療法

現在のところ、水俣病の根治療法はないため、症状に応じた対症療法が行われている。

慢性期の治療

1. リハビリテーション

機能回復及び機能の維持を目的とした理学療法、作業療法による治療を行う。胎児性水俣病では近年歩行障害と嚥下障害の進行が見られるため、ベルト電極式骨格筋電気刺激法(B-SES)、HAL単関節、無動力歩行アシストなどを使った歩行訓練や複合低周波治療器を用いた嚥下訓練を行っている。

  • 歩行障害に対するリハビリテーション

  • 複合低周波治療器を用いた嚥下リハビリ

2. 対症療法

有痛性筋強直性痙攣や不随意運動、筋緊張異常などの症状を軽減させる薬物療法に加えて、症状に応じた最新の治療が試みられてきている。詳細な情報はHPのパンフレット(ここまで良くなる神経疾患~水俣病患者さんの日常生活動作の改善を目指して~)をご参照ください。

表:水俣病の対症療法

症状 治療法
疼痛 磁気刺激治療
脊髄刺激療法
手足の筋⾁のつっぱり ボツリヌス治療
バクロフェン髄注療法
磁気刺激治療
ふるえ 脳深部刺激療法