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第15回健康セミナー開催報告

と き  2008年8月9日
講 師 国立循環器病センター名誉総長・社団法人日本脳卒中協会理事長
     山口武典先生
座 長 熊本市熊本市民病院 橋本洋一郎先生
テーマ 血管の老化 —脳卒中を中心にー


 8月9日土曜日、水俣病情報センターで第15回の健康セミナーを開催しました。今回は、水俣市芦北郡医師会のほか社団法人日本脳卒中協会とファイザー製薬も主催者に加わっていただいています。猛暑のなか、100余名の方にご来場いただきました。
 日本における脳卒中内科の第一人者である山口武典先生の脳卒中に関する分かりやすく講演いただき、橋本先生からは、日本全国から注目を集める「熊本脳卒中地域連携ネットワーク」について説明していただきました。決して他人事ではない関心度の高いテーマということもあって、皆さん熱心に耳を傾けていました。

 ご講演の一部をご紹介しましょう。

 まずは、山口先生のご講演から
 『後期高齢者』という言葉がいろんな関心を集めていますが、もともとは医学研究のなかで高齢者を『young old』『old old』『oldest old』に区分してデータを解析したのが由来。『old old』を『後期高齢者』と和訳してしまったのが誤解のもとかもしれません。ちなみに私はyoung old。
 さて、高齢者をどのように区分しようと、個人差は高齢になるほど個人差は拡がります。老化を遅らせて健康寿命(=寿命—要介護期間)を伸ばすことは皆の願い。
 健康寿命を妨げる要介護の原因の上位(特に男性では41.3%を占め、ダントツ)にあるのが脳卒中。脳卒中にならないためにはどうすればいいのか。脳卒中を初めとする生活習慣病は、『食べすぎ』『飲みすぎ』『吸いすぎ』『働きすぎ』『怠けすぎ』などの望ましくない生活習慣と遺伝的要素により引きおこされます。生活習慣を改善すれば、年齢は重ねても老化は遅らせることで、脳卒中を予防することができます。
 一方、脳卒中かな?と思ったらどうするべきでしょうか。まず、すぐに救急車を呼んでください。脳卒中の典型例である血管がつまってしまう脳梗塞は、血栓溶解薬(t-PA)を発症から3時間以内に投与し、血栓を溶かして血流を回復させることで改善します。3時間以内にt-PAを投与するためには、2時間以内に病院に着かなければなりません。そのためにも、脳卒中かな?と思ったら、すぐ救急車を!
 この原則を広く知っていただくために日本脳卒中協会では公共広告機構と協力してテレビキャンペーンを実施しています。

 次に、橋本先生のご講演から
 t-PA治療の成功の鍵は、山口先生のご講演でお示しになったように発症から治療開始までの時間を短縮することにあります。熊本市内では、救急隊と病院の協力体制が「熊本脳卒中地域連携ネットワーク」として早くから確立しています。急性期の治療のあとには何が必要でしょうか。急性期病院での治療終了後は、回復期リハ病院、維持期リハ病院、かかりつけ医による在宅医療などの地域連携により、急性期治療からリハビリテーション治療を継続して行うことがなにより重要です。熊本市内では基幹病院とかかりつけ医まで一貫して地域で患者さんを支える『地域連携パス』がいち早く導入されています。

 山口先生、橋本先生の分かりやすく、楽しい話しぶりに笑いもおこりつつ、関心度の高い話に、聞き漏らすまいとメモをとる方も多く、身を乗り出しように聞き入るなど、楽しくて、ためになる講演となりました。

 セミナー後半ではご来場の皆さんに開始前に答えていただいた脳卒中の基礎知識に関する調査結果にもとづいて、両先生から解説をしていただきました。(調査結果はこちら
 脳卒中の症状はどのようなものか、脳卒中が疑われたらどうするか、t-PA治療が可能な時間帯はどのくらいか、脳卒中の再発を防ぐには何が重要か、などの知識がどのくらい浸透しているか、日本脳卒中協会等でこれまでにも同様の調査が実施されています。比較もしつつ、解説していただきましたが、ご来場の皆様の知識はかなり高いものでした。
 脳梗塞の改善に有効なt-PA治療については、水俣市内には残念ながら今のところ実施医療機関がありません。水俣に最も近い実施機関は八代市にある熊本労災病院であることも橋本先生からご紹介されました。八代までは搬送に1時間近くかかるので、水俣市民は、より一層早めの対応が必要です。今後の医療体制を市民全体で考えていく必要がありそうです。
 今回の調査結果は、日本脳卒中協会の今後の啓発活動の資料に提供させていただきます。

 今回も、水俣市を中心に、周辺市町の方々も足を運んでくださいました。
 年齢層は、60歳以上の方がおよそ8割をしめており、脳卒中というテーマに対する高齢者の関心の高さが伺える結果となりました。



セミナー終了後のアンケートにご記入いただいたご意見をご紹介しましょう。

【今回の健康セミナーは】

  • 話をきいて自分で予防できる病気なので、歩いたり、食事を食べ過ぎないように注意するなど努力したいと思いました。
  • 地方ほど予防の必要性が高いことが分かった。そのためには、そのような場を作る必要もあるし、専門家をつなぐシステムも必要だと思いました。
  • 脳卒中についての知識の整理ができました。また、予防の大切さを再認識しました。ありがとうございました。
【今後、取り上げてほしいテーマは】

  • 薬の使い方、飲み方、漢方薬などについて薬剤師の先生の話
  • 介護予防について
  • 若年層の参加を促すテーマ
【国水研・情報センターの活動について】

  • 健康セミナーを聞きに来るのをとても楽しみにしています。
  • 地域に入り込んだ活動もやっていらっしゃるとは思いますが、たとえば情報センターまで来られない方々のために、地域に出向いてセミナーを開くなどしていただけるとありがたいと思います。
 水俣病情報センターでは毎週木曜日に水俣病情報センターで健康相談室を開いています。
 お気軽にご相談ください。

ご来場いただいたみなさま、どうもありがとうございました。