国立水俣病総合研究センターの研究成果等を広く知っていただくための情報発信、国内外の水銀研究者との交流・親睦を目的として、毎年「NIMDフォーラム」を開催しています。このNIMDフォーラムでは水銀や水俣病に関連したテーマに関する国内外の専門家を招へいして開催しており、原則として国内開催と国外開催を交互に実施しています。
今年のNIMDフォーラムのテーマは、低・中所得国における水銀研究能力の強化と、特に脆弱な人口への対応に焦点を当て、水銀国際会議前日に南アフリカ・ケープタウン国際会議場にて開催しました。
低・中所得国では、小規模金採掘(ASGM)、水銀含有製品の使用、電子廃棄物のリサイクル、水銀に汚染された魚の多い食事などの活動により、重大な課題に直面しています。これらの課題に対処するため、フォーラムでは最新の研究と実践的な解決策を共有するための様々なプレゼンテーションと討論が行われました。
講演は藤村成剛(国立水俣病総合研究センター)とチャクリヤ・マラスク博士(アジア工科大学院、タイ)による調査方法と効果的な調査設計に続き、アルヴィン・チュア博士(日本インスツルメンツ株式会社、シンガポール)と山元恵(国水研)による実用的な水銀分析方法の紹介がありました。さらに、原口浩一(国水研)による水銀曝露の有意変化をタイムリーに検出する分析品質についての講演、斎藤 貢(国連環境計画、タイ)による持続可能な水銀管理戦略について議論が行われました。
ケーススタディでは、ナフハ・アッバス博士(気候変動・環境・エネルギー省、モルディブ)が小島嶼および沿岸地域コミュニティの水銀曝露に関する研究成果を共有し、ブペンドラ・デブコタ博士(応用科学大学、ネパール)がカトマンズにおける伝統的な金メッキ作業による環境および健康への影響と安全な技術導入の取り組みについて発表しました。リカルド・オリベイラ博士(西部パラ連邦大学、ブラジル)はアマゾン河流域の先住民コミュニティに影響を及ぼす金採掘に関する問題について、ジョン・アネター博士(イバダン大学医学部、ナイジェリア)はナイジェリアにおけるASGMの状況について説明しました。また、サルカー・パルヴェズ博士(icddr,b、バングラデシュ)はバングラデシュの電子廃棄物リサイクル業者が直面する健康リスクについて共有しました。
これらのプレゼンテーションは、低・中所得国における水銀モニタリングの持続可能な方法と課題についての議論を深めるものでした。また、これにより、水俣条約の有効性評価に資するための技術協力と知識交換を促進し、将来の共同研究の可能性を探ることができました。
講演内容等の詳細は、以下の講演要旨集をご覧ください。