Q
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A
水俣病は、メチル水銀が大量に蓄積された魚を長期にわたって多食した人が発症しましたが、魚の汚染の度合いとそれを食べた量、そして食べた人の水銀に対する感受性によって症状や程度に違いがありました。なお、メチル水銀は自然界にも存在していますが非常に低濃度で、現在多量のメチル水銀に汚染された魚はいないため、魚を食べても水俣病にかかる心配はありません。
水俣病はメチル水銀が体内に入って起こる病気ですが、お腹の中に赤ちゃんがいるときに母親が汚染魚を食べて、メチル水銀が胎盤を通って赤ちゃんに入り、水俣病となりました。これを胎児性水俣病といいます。また、子ども自身が魚を食べて水俣病になることもありましたが、この場合は小児性水俣病といいます。
どの病気にも軽い症状から重い症状まであるように、水俣病の症状にもそれぞれ違いがあります。水俣病が公式に発見された当時、非常に重症で激しい症状を示した患者さんが、数週間で亡くなった場合もありました。このような例を「劇症型」といいます。
令和3年(2021)10月末現在、397名の水俣病認定患者の方が生存されています。
水俣病が公式に発見された当初は、原因もよく分からないまま「伝染病説」が広まり、「うつる」と誤って伝えられたために、当時の患者さんが辛い差別を受ける原因の一つになりました。しかし水俣病はメチル水銀が体内に入って起こる病気で、うつることは決してありません。
一度損傷した神経細胞は再生しないため、メチル水銀中毒で失われた脳神経細胞は元に戻りません。しかし、症状によっては、残存する健全な神経細胞による代償機能を引き出すことを目的としたリハビリテーションや薬物治療で、ある程度の軽減が期待できます。
原因となったメチル水銀を流していた新日本窒素肥料株式会社水俣工場のアセトアルデヒドの製造は、昭和43年(1968)に中止され、水俣湾の魚も徐々にメチル水銀の濃度が下がってきました。現在では国の定めた暫定基準(総水銀 0.4ppm、メチル水銀 0.3ppm)を超える魚はいなくなり、新たに水俣病にかかる人はいないといえます。
体内のメチル水銀を糞尿中に排出させる効果のある食物や薬物がいくつか知られています。曝露に気付いたらできるだけ早い時期に排出治療を行うことが重要になります。それによって、メチル水銀による神経症状なども軽減することが期待できます。