Q
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A
生態系ではバクテリアや植物に始まって肉食の動物まで、食う−喰われるの関係がピラミッド型につながっています。環境に放出された汚染物質の中には、この食物連鎖の順位が上(後)に行くほど、含まれる濃度が高くなるものも少なくありません。メチル水銀もその一つです。
大気中に放出される水銀の量の年間推定量は、火山の噴火が約80~600トン、海水面からの蒸発が約2,000~2,950トン、化石燃料(主に石炭)の燃焼からは約2,000トンとなっています。その他、地表や植物(約1,700~2,800トン)からも出ており、大気中の水銀はやがて雨や霧とともに地表や海水面に戻ってきます。
水環境中のある種のバクテリア(Desulfovibrio desulfuricans LSなどが知られています)は、無機水銀を取込み、メチル水銀に変えていきます。このようにしてできたメチル水銀は、プランクトン→小魚→肉食魚といった水棲生物の食物連鎖によって、魚介類に蓄積されていきます。
自然界に存在する水銀化合物のうち、メチル水銀のほとんどは消化管(小腸)から吸収されますが、無機水銀塩の場合、数パーセントしか吸収されません。メチル水銀はアミノ酸のひとつであるシステインと結びついて消化管から簡単に吸収され、身体の中でいろいろなところに入り込む性質を持っています。このため、脳の中に入りこんで神経細胞に傷害を与えたり、お母さんと胎児をつなぐ胎盤の関門を通り抜けて、胎児の身体にも入ったりします。また、金属水銀は消化管からはほとんど吸収されませんが、気化しやすく、その蒸気を吸いこむと肺から80%近くが吸収されるため、量によっては中毒を起こすこともあります。海外の例では、金採掘の際に使用する気化した水銀の曝露などがあります。
魚肉中のメチル水銀は蛋白質としっかり結合していて、真っ黒な炭になるまで焼かない限り、調理に使う加熱程度でなくなることはありません。また、フライやてんぷらの際に使う調理油や煮付けの場合の煮汁に溶け出すこともほとんどありません。